最近、むし歯や歯周病などによる口腔内環境の悪化が
全身の疾患に影響することが論文や雑誌など
多くのメディアで取り上げられるようになりました。

医療従事者にとっては既に当たり前のこととなっていますが、
患者さんにおきましてどうなのでしょう??
身近な声を聞いてみました。

私自身、注目度があがってきた実感はあります。
しかし、身近な声を聞いてみると、
まだまだこんな声を多く聞きます。

  • 歯が痛くなってから歯医者に行けばよい
  • むし歯や歯周病って誰でももってるんでしょ
  • 歯磨きすると血が出るけどいつものことよね

かかりつけの歯医者がある人は私の身近にもたくさんいます。
そこで、
歯周病と全身の病気との関係について知っているか?
聞いてみました。

あくまで私のヒアリング結果ですが、
歯周病と糖尿病の関係は半数以上が知っていました。

しかし、
歯周病と動脈硬化との関係を知っている!
という人はゼロという結果でした。
これが現状なのだと実感しました。

この現状を何とか打破したい!
歯科に携わる者の果たすべき役割は
多くあるのではないでしょうか。

何故なら、むし歯や歯周病を放置すると
こんなに怖いことがわかったのですから。

ほっておくとこんなに怖い歯周病

例えば、歯周病と糖尿病の関係。
歯周病が糖尿病の血糖コントロールを
困難にさせることは既に多くの報告があります。

歯周病は細菌の感染症です。
その病変部からは炎症性サイトカインが分泌されます。
そのサイトカインが血液を巡り、
細胞へのグルコース取り込みを阻害したり、
インスリンに対する感受性の低下が起こしたり
するとされています。

歯周病の患者は慢性的な炎症状態になります。
この炎症状態が続くことでインスリン抵抗性を惹起し、
血糖コントロールに影響を与えると考えられています。

そして、糖尿病にとどまらず、
合併症である動脈硬化にも
影響を及ぼす
ことがわかってきました。

循環器系疾患に罹患している患者のプラーク(粥腫)から
主要な歯周病原細菌の一種である、P.gingivalis
がPCR法にて検出されたという報告があります。

動脈硬化が進行すると心筋梗塞や脳梗塞を
引き起こすことは既に周知のことだと思います。
重度歯周病患者では軽度歯周病患者より
脳梗塞発症率が1.57倍高い
という報告もあります。
(プラクティス, Vol.32,No.2, 136-139,2015より)

むし歯菌は動脈硬化プラークにも潜んでいる

一方、むし歯と全身疾患の関係はどうでしょうか。

むし歯においてもメタボリックシンドロームや
動脈硬化との関連が論文に出ているようです。

日本人の男性労働者の事業所健診データを用いた研究報告です。
未処置の歯を持つ者は持たない者に比較して、
肥満や内臓脂肪異常の比率が高く、
高血圧、脂質異常、高血糖とも
有意な関連が認められています。

また、別の日本の研究で、
人の動脈硬化プラーク内の口腔細菌の存在を、
PCR法を用いて調べた報告があります。
調査した菌種の中では、主要なう蝕原性菌である
S.mutansの検出率が最も高かったようです。

むし歯と動脈硬化の関連メカニズムについては、
まだまだ研究が足りていないようで、
これからの研究報告が待たれます。
(口腔衛生会誌, 66, 2-8,2016より)

皆さんも患者さんの中で、
ご自身の口腔状態が深刻なのに
実感されていない方がいませんか?

歯が痛い、歯ぐきから出血が止まらないといった
主訴で来院される患者さんはまず治療がメインになると思います。

治療後に予防目的で定期的に来院されるようになるまでに
いくつかのハードルを乗り越えなくてはなりません。

そのような患者さんにむし歯や歯周病を放置していると
糖尿病や動脈硬化など全身疾患につながることを
知ってもらうことはとても大事な取り組みだと思います。

今後、治療型歯科医療から予防型歯科医療へシフトしていく
歯科医院にとって重要な活動になるのではないでしょうか。

予防歯科を普及していくことで、
口腔内環境のみならず、
全身の健康に寄与する。

私たちメーカーの果たすべき使命も
数多くあると思います。
出来ることから少しずつ実践していきたいと
思います。