歯周病は糖尿病の第6の合併症ともいわれており、
2つの疾患にはとても強い関連性があるのは
皆さんもご存知の通りです。

では糖尿病が強く疑われる患者さんは、
日本にどれくらいいるかご存知ですか??

1. 約500万人
2. 約1,000万人
3. 約2,000万人

さて、正解は・・・

2 の 「約1,000万人」です!
(厚生労働省HP 図表1-2-8
 糖尿病患者数の状況より)

意外と多いなと思いますか?
それとも少ないなと思いますか?

歯周病と糖尿病の間には、
どのような関連があるのでしょうか。

糖尿病患者さんは歯周病になりやすい!

糖尿病患者さんの歯周病合併率はどのくらいなのでしょうか。

ある有名なアメリカの疫学調査によれば
歯周病の罹患率は
15~34歳の健常者は約10%であるのに対して、
糖尿病患者さんでは5倍の約50%でした。

さらに
35~54歳の健常者の約50%が罹患しているのに対し、
糖尿病患者では約9割の罹患率となったそうです。

年齢とともに全体の罹患率が上がりますが、
糖尿病患者さんの罹患率の増加は著しいものがあります。

つまり、特に糖尿病の患者さんでは
歯周病の罹患リスクが上昇する
ということです。

では、どうして糖尿病患者さんは
歯周病になりやすいのでしょうか?

糖尿病とは
「インスリン作用不足による
慢性の高血糖状態を主徴とする代謝疾患群」
(糖尿病治療ガイド2016-2017 より)
と定義されています。

従来、糖尿病患者さんにおける歯周病は、
この血糖値の上昇に伴って、
増殖に糖分を必要とする特異的な細菌の割合が
増加することが原因であるといわれてきました。

しかし近年では持続的な高血糖状態に依存して、

  • 各種タンパクが糖化し、AGE(最終糖化産物)が産生
  • 好中球機能が低下
  • 繊維芽細胞の機能異常

などにより、

  • 炎症反応が増強
  • 免疫力の低下
  • 組織障害を修復する力の低下

が引き起こされることに起因するといわれています。

では、その逆も成り立つのでしょうか?

歯周病に罹患していると糖尿病にかかりやすい!

歯周病に罹患していると、糖尿病の有病率や発症リスクが
高いということは既に報告されています。

例えば、
米国国民健康栄養調査(NHANES)では、
歯周病を罹患している集団の糖尿病有病率は
罹患していない集団の約倍高いことが示されています。

これは、歯周病が「慢性炎症性疾患」であることに
起因しています。

つまり、
歯周病での慢性的な炎症反応の持続により、
TNF-αなどの炎症性サイトカインが分泌され、
筋肉や脂肪での糖分の取り込みを
阻害することにより、インスリン抵抗性を惹起する
ということです。

インスリン抵抗性が増大する=インスリンが効きづらくなる
ということですので、糖尿病の第一歩になるというのが
1つの説として考えられているということになります。

このようなことからも、
糖尿病を罹患されている来院者さんに対して
歯周病予防の指導をおこなうことは
非常に重要であることがわかります。

冒頭に日本の糖尿病患者は約316万人とお話しましたが、
これはあくまで医療機関を受診した患者数を元にした結果です。

平成26年の国民健康・栄養調査によれば
20歳以上の糖尿病を強く疑われる人※は
男性で15.5%、女性で9.8%
と報告されています。
※HbA1c(NGSP)値が6.5%以上であるか糖尿病の治療を受けている人

あなたの医院に来院されている患者さんの
10人に1人は糖尿病かも知れません!

初診のカウンセリング時に
もし「糖尿病」の既往歴に
チェックがついた患者さんを見つけたら・・・
歯周病のリスクと併せて、糖尿病と歯周病の関係に
ついても説明してみてはいかがでしょうか。