あなたの患者さんは「イヤイヤ治療型」ですか。
それとも「なるほど予防型」ですか。
「イヤイヤ」を「なるほど!」に変えるためにどんな取り組みが必要なのでしょうか。

これを考える前に、患者さんにとって歯科医院がどんな存在なのか考えてみましょう。
あなたの患者さんは
「今日は歯医者に行く日だ!(ワクワク)」
と思っている方ばかりですか?

「歯医者なんて行きたくない!」と思う人が
ほとんどなのではないでしょうか。
そんな患者さんは痛みをギリギリまで我慢して、ようやく重い腰を上げたころにはC3まで進んでいることが大半でしょう。

患者さんもわかっているはずです。
ここまで放っておく自分が悪いと・・・

しかし、本当に患者さんだけが悪いのでしょうか。

もっと患者さんが来院しやすい環境を整え、患者さん自らがご自身の歯について予防意識を高めてもらうよう導いてあげることが我々歯科従事者の役割です。

しかし実際はなかなか予防まで繋がりません。
特に郊外の歯科医院ではなおさらその傾向が強く治療のために来院する患者さんがほとんどではないでしょうか。

では患者さんに
「イヤイヤ治療型」から「なるほど予防型」
シフトチェンジしてもらうためにはどうすれば良いのでしょうか。

二次カリエスと予防歯科について、
そして最も「イヤイヤ期」が強い中高年層の患者さんの気持ちになって考えてみました。

患者さんは「イヤイヤ」治療しに来られるもの

ネットやSNSの普及によって特に最近の若い人は歯を健康に保つための知識を取り入れ、予防やホワイトニングなどに対する興味など、歯に対する美意識が高まっています。
このような患者さんは自らの意志で定期的に歯科医院へ足を運んでいます。

つまり「予防歯科」というものを理解されていることになります。

しかし、皆が皆、そういった意識の高い患者さんばかりではありませんよね。
特に中高年の患者さんは幼少時代に、現代の子供のように仕上げ磨きやフッ素塗布などを積極的に行ってきたわけではないと思います。

詰め物はアマルガム、痛くなったら抜く・・・

こういった時代を過ごした患者さんの大半は、
「痛くなってから治療に来る」わけですから、
とにかく今痛いところを治すことだけを考えて歯科医院に飛び込んできます。

つまり痛くてどうしようもないから
「イヤイヤ」「仕方なく」
治療をしに来るのです。

やっと治療を終え、
「今日で全ての治療が終わりです」と聞いたとき、
患者さんは心の中できっと
「バンザイ!!もう歯医者通いとはオサラバだ!」
とガッツポーズをしているでしょう。

予防意識を持ってもらうベストのタイミング

では当分歯医者に来なくていい、と思っている患者さんに
どのようなタイミングと話し方で
メンテナンスのご案内をすると
「なるほど!」と思っていただけるでしょうか?

治療終了時は、患者さんの
「もう虫歯にならないように歯みがきを頑張る」
という気持ちがいちばん強い時です。

ブラッシングの大切さを痛感し甘いものを控える・・・
患者さんは、
「セルフコントロールのみで口腔内環境を整える」
といった意識でいるでしょう。

このときに患者さんに対して、
「メンテナンスのために定期的に来院してください」
とだけ伝えては、
「もう具合は悪くない!
なんでまだ歯科医院へ来なくてはいけないの??」
と思われてしまいます。

メンテナンスの案内を行う時に、
「今ある歯を大切に」
「お家では取れない汚れを歯科医院で取る」
などのフレーズを使うのは一般的ですよね。
これはもちろんその通りです。
でもそれだけでは患者さんの多くは「なるほど!」と思ってくれません。

「なるほど」と思ってもらうために、一番重要なこと!
それは・・・
「たった今、治療を終えた歯について」
治療終了時に説明を行うことなのです。

「治療を終えた歯のことは説明しているよ」
とおっしゃる方もいるかも知れません。
でもそれって、「どんな治療をしたか」といった内容ではありませんか?

大事なのは
「せっかく治療を終えた歯は、今後どうなるか?」
ということなのです。

二次カリエスの可能性と再治療について患者さんは知っているのか

私はこれまで2つの歯科医院で勤務していました。
そのうちの1件は、二次カリエスについての説明はありませんでした。
治療が終わると
「半年後にまた検診を」
とだけ伝えて院長は部屋に戻ります。
そこで、歯科衛生士が説明するかと思いきや、
ニコニコしながら「お大事に~」と見送っていました。

この説明で患者さんは
「半年後に検診に来なくちゃ!」
と思ってくれるでしょうか。
普通は思いませんよね。

検診の時期が近づいた患者さんには、もちろんリコール案内のハガキを出すでしょう。
しかしよほど意識が高い患者さんでなければ、なかなかリコールに来ないというのが現状です。
これでは残念ながらその患者さんが来院されるときは、また歯が痛くなったときです。

患者さんにとってみると
「なぜ半年後に検診を行うのか」
その理由がわかりません。

そこで患者さんに
「今治療した歯は再び虫歯になる可能性が高いこと」
を知ってもらうこと。まずここがスタートです。

自費治療を積極的に行っている歯科医院では、セラミックを使用したカリエス治療を行うでしょうが、そうでない場合はまず保険治療です。
保険治療における二次カリエスの発生リスクは非常に高いにもかかわらず、患者さんにはその認識がほとんどありません。

治療した歯はこれで終わりではありません。
ここからがスタートであることをこちらがしっかりと伝えなければ、患者さんにはわかりません。

治療済みの歯は再びカリエスになりやすく、再治療を繰り返すことで歯を失う可能性が高くなってしまう。
このことを患者さんにきちんと知ってもらうことが
「なるほど!予防が大切だよね。」
という「なるほど予防型」の患者さんへシフトチェンジする意識改革に繋がるのではないでしょうか。

つまり、
「今治療した歯を失わないために」

「ご自身では落としきれない汚れを取り、治療済みの歯や他の歯に変化はないかをチェックする」

「今ある歯を大切にしていただくための予防歯科」
というステップで患者さんに伝えることがベストだと思います。

そもそも患者さんは、
「予防歯科って何?」から始まるのです。

特に中高年の年齢層の方々に知ってもらうために。
わたしたち歯科従事者が「どうやって予防歯科に来ていただくか」よりも「どうやって予防歯科を知ってもらうか?」に重きを置いて接することが必要です。

患者さんに「予防歯科」の重要性を認識してもらうために

患者さんの予防歯科に対する意識は、やはり年代によるものが大きいでしょう。
これまで予防意識がなかった、あるいは知らなかった患者さんにとって、具合が悪くないのに来院することは正直面倒くさいものです。

その意識をどのように予防歯科へと改革するのか?
そこがあなたの役目です。

治療を終えた患者さんのうち、

  • 二次カリエスのリスク
  • 予防歯科の重要性

これらはほぼ全員の方が知らないと認識してください。

患者さんの歯と健康を守る「予防歯科」が主流となるであろう今後。
「なるほど!予防って大切だな」と自ら歯科医院に足を運ぶことができる。
「なるほど予防型」の患者さんを増やすために・・・

歯科従事者であるあなたの役割はますます大きくなることを再認識すべきではないでしょうか。

By 歯科TC A