4月に新卒含めた新人スタッフを迎え、
研修を行っている歯科医院も多いと思います。

また、中途採用のスタッフが時間差で
夏前に入ってくることも
歯科医院では多くみられます。

こうした新人スタッフを迎える時に、
一番大事なことは何だと思いますか?

それは、「存在を認めること」です。
一体どういうことなのか、見ていきましょう。

入職3日目で辞めたAさん

「あれっAさんは?」

新人スタッフAさんが来ておらず、
○歯科の朝礼の場がザワつきました。

入職してまだ3日目です。

担当の先輩スタッフBが
電話をかけてみても、応答は無く、
留守番電話にすらなりません。

「Bさん…まさか何かした?」
「いやいや、何もしてないですよ~!
っていうか、何かできるほど時間が経ってないですよ」

「それは…そうね。じゃあ、何でAさんは来ないの?」

診療時間が終わる頃、院長夫人がやって来て
Aさんが辞めたことを伝えました。

Aさんはなぜ辞めたのか

院長夫人がAさんから聞いた内容は、
次のようなことだったそうです。
1.履いてきた靴をどこに置いたらいいかわからなかった。
2.誰かに聞こうと思っても、誰もいなかった。
3.どこで着替えたら良いかわからなくて、トイレで着替えた。
4.朝礼でいきなり自己紹介をするよう言われた。
5. 昼休みに「新人の仕事」をするよう言われた。

仕事の内容には関係の無い事ばかりですし、
「誰かが何かした」わけでも無いようです。

甘えてない?と誰かが言いましたが、
院長夫人がたしなめました。

新人のうちは、スタッフの一員ではない?

確かに、上で挙げた事柄は、
既存スタッフにとっては
取るに足らないことばかりでしょう。

院長夫人にしても「そんなことで?」と
不思議に思ったかもしれませんし、
募集から採用までの苦労を考えた時には、
辞める理由にならない、甘えている、と
思ったとしても何ら不思議はありません。

しかし、
自分が他の知らない医院で
仕事をすることになったと仮定して、
同じことが起こったとしたら…
どのように感じるでしょうか。

「今日からここの一員なんだ」と
思う事ができるでしょうか?

初診患者と新人スタッフ

新人スタッフへの応対は、
初診患者への応対と似ています。

初診患者は、治療という目的はあっても、
知らない所に来ているので
不安を覚えがちですが、
同じように、新人スタッフは働くという
目的があっても、知らない所に
来ているのでやはり不安があるものです。

特に助手の場合は、
最近は他職種からの転職であることが多いため、
余計に緊張している場合があります。

社会人として経験があるんだから、
と期待するのは、彼女たちにとっては
少し酷な話だと言えます。

「認められている」感覚の生み方

では、新人スタッフがどういったことで
「スタッフと認められている」と
感じるのかというと、
ごく普通のことばかり、
しかもちょっとしたことです。

例えば、
「初日に出勤した時、靴を置くところに
自分の名前が書いてあるシールが貼られていて、
今日からここで働くんだなあと思った。」

「入口から入ったらスタッフがいて、
色々案内してくれた。」

「○○さん、今日からよろしくね。
と言われて嬉しかった。」

「院長が皆に紹介してくれて、
期待していると言ってくれて嬉しかった。」

もしかしたらAさんは、院内に入った時に
先輩スタッフが一人でも出勤していて、
その人に尋ねることができたのであれば、
たった3日で辞めたりはしなかったかも
しれませんね。

一員であるという自覚が医院への貢献を生む

新人スタッフが入ってくることを考えると、
嬉しい反面で、育つまでの道のりを考えた時には
煩わしいと思う事もあると思います。

しかし、新人スタッフがすぐに辞めるかどうかは、
仕事の内容や、言われたこと、されたことよりも、
「一員であるという自覚を持てるかどうか」で
決まってくることがほとんどです。

まして、歯科業界は万年人手不足で
売り手市場ですから、
「衛生士免許を持ってるなら、
誰だってよかったんでしょ」
と半ば自嘲気味に話していたりするのが
今の新卒です。

できることなら「期待しています」と、
声を大にして、しっかりと伝えて下さい。

一員である、という自覚が、
医院へ貢献していく動機をもたらすでしょう。