年齢を重ねると、歯肉の退縮や唾液量の低下など、
口腔内にも変化が現れます。

こうした変化を早めに受け止めてもらうことも、
予防歯科では大切になってくるでしょう。

今回は、加齢に伴う口腔の変化を上手に伝え
ながら、受診意識へとつなげる工夫を紹介します。

年齢の問題はデリケート

加齢による変化には個人差がありますが、
一般的には年齢とともに咀嚼に関わる筋力や
唾液分泌の機能が低下し、歯肉の退縮や
口腔乾燥・嚥下力の低下などが見られます。

これらは自然な変化ですが、むし歯・歯周病、
義歯の不具合、誤嚥性肺炎などのリスクが
高まる可能性が考えられます。

年齢による変化を正しく理解することは、
患者さんが自分の状態を受け止め、ワンランク上の
セルフケアを行うための第一歩です。

とはいえ、“年齢の話題”はとてもデリケート。

伝え方を誤ると「老化を指摘された!」と、
不愉快な気持ちにさせてしまう恐れもあります。

「年齢のせい」ではなく、
「年齢に合わせたケアが大切」
という前向きな伝え方を意識することが大切です。

年齢別のよくあるトラブルと口腔環境の変化

世代によって、口腔内で起こりやすい変化には
特徴があります。

代表的な傾向をおさらいしましょう。

世代変化・お悩み例ケアのポイント例
40代~50代歯肉の退縮
知覚過敏
過去の治療部位の劣化
定期的な検診と機械清掃
コーティング剤の塗布
詰め物の作り替え
60代唾液量低下
口臭
骨密度の低下
歯の喪失
ドライマウス対策
唾液腺マッサージ
義歯の制作
70代~咀嚼力・嚥下力の低下
口腔乾燥
歯の喪失
誤嚥予防のトレーニング
義歯の制作

若いスタッフの中には、こうした加齢変化を
具体的に知らない場合もあります。

ミーティングや勉強会の場で世代別の特徴を
共有し、患者さんの年齢に応じた配慮や
声掛けの仕方を確認しておくとよいでしょう。

世代別の声掛け例

話題に出す際には、年齢を理由にせず
自然に伝えられる表現を選ぶことが大切です。

「最近、歯ぐきの状態が少し変わってきた
ようですね。ご自身で普段何か気になるところは
ありますか?」

「私も同じような変化があって、今は歯ブラシに
加えて歯間ブラシを使うようにしてるんです。」

「早いうちからケアを見直すことで、
将来的なトラブルを防ぎやすくなりますよ。」

「誰にでも起こりうることなので、
恥ずかしがらずに何でも話してくださいね。
〇○様には、快適に過ごしていただきたいので。」

「年齢による変化は誰にでも起こりうる傾向で、
事前に対策を取っておくことで将来的な
トラブルを予防できます。」

「私の家族も同じような変化があって、
簡単な口の体操や歯磨きの工夫がとても
効いたんです。よかったら共有しますね。」

ポイントは、一般論として伝えることと、
共感を交えながら話すことです。

「年齢だから仕方ない」ではなく、
「年齢に合わせた対策で今の状態を保てる」という
前向きなメッセージに変えることで、
患者さんも受け入れやすくなるでしょう。

また、院内掲示やリーフレットのような形で
患者さんへ情報を提供するのも方法の1つです。

幅広い層の情報をまとめて載せることで、年齢の
指摘という印象を和らげることができるはずです。

まとめ

加齢による口腔変化を“指摘”ではなく“共有”
として伝えることが、信頼関係を維持するための
ポイントとなります。

患者さんの心に寄り添える言葉選びを意識し、
定期的な受診や日常のケア意識の向上へ
つなげていきましょう。

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