悪い人じゃなさそうなんだけど、
なぜか疲れる。

お帰りの後に、応対したスタッフが
なぜか疲れているように見える。

こんな患者さん、いませんか?

指示に従わないなどの治療・処置上で
困った事が起きているわけでは無いし、
悪い人じゃないからこそ、
無下にできませんよね。

今回は、こういった患者さんの特徴と、
対処法について考えていきます。

話が長い・・・だけではないFさん

「ここの歯科医院は最高だって
伝えておいたからね。」

Fさんはメンテナンス通院歴2年目の患者さん。
初老の女性です。

「いつもありがとうございます。」
応対しているのは衛生士のBさん。
ずっとFさんのメンテナンスを担当しています。

「○○という議員にここ(=A歯科)を紹介した。○○さんは…」
「今待合にいる▲▲さんは□□町内会長で、私の紹介で…」

話は続きます。

毎回何とか処置は行いますが、
Bさんがブラッシング指導を行っている時も
「よくわかるわ。さすがね。」
などと褒めて自分の話す出番を作り、
そこから自分の話を始めてしまいます。

メンテナンス後の会計時にも、
待合はもっと明るくした方が
患者が増えるのではないか、
洗面所のハンドソープが減っていた、
などのアドバイスで時間がかかりがちです。

今年の夏にはお中元が届きました。

近所で安かったからとお菓子を買って
持って来ることもたまにあります。

先日はついにSNSでBさんを見つけたと言って
友達になりましょうというので、
「御用のある時は医院にお電話くださったほうが
つかまりやすいですよ。」
と遠回しに断ったものの、
Bさんは、これからもFさんの担当を続けるのは
しんどいかも…と思ってしまいました。

Fさんの心理学的な特徴

上のFさんの事例から、「なぜか疲れる」原因に
なりそうな要素をまとめてみます。

1. 新規患者獲得に協力していることを示すような話の内容
2. 人脈をほのめかす(議員、町内会長)
3. コンサルタント的なアドバイス
4. 贈答行為
5. 個人的な接触を持とうとしている

こうしてみるとわかるように、
Fさんの言動の目的は、
・存在の重要性アピール
・感謝されたい
のどちらかに当てはまります。

医療機関では「公平・公正であること」が
望ましいのにもかかわらず、
「Fさんは特別扱いをしてほしいのでは?」と
考えさせられてしまう。

このことが「なぜか疲れる」原因でしょう。

このFさんのような人を、
心理学的には承認欲求の高い人
と呼んだりします。

好かれたい、
褒められたい、
そういった気持ちが大きい人という意味です。

承認欲求自体は誰もが持つ
普遍的な欲求だそうですが、
度が過ぎると周囲が面倒、
振り回されているような感じを覚えます。

どちらかと言えば郊外に多く、
開業間もないクリニックに
現れることが多いようです。

また、世慣れていなさそうな
若いスタッフとの接触を好む傾向にあります。

A歯科側の問題と対処法

これに対し、A歯科側が問題だと捉えたことは、
1. 処置時間が取れない。
2. 他の患者さんの手前、大っぴらにお礼が言えない。
3. 受付をふさぎ、他の患者さんを待たせることがある。
4. (Bさん)褒めないといけないのではないかと思い、返答に困る。

主に「時間」の問題です。

対処法としては、
予約を患者さんが少ない
曜日・時間帯に取るよう誘導する
のがいいでしょう。

歯科医院側に余裕をつくることが
先決ということです。

「予約時間を長めに取る」などの
対応も考えられます。

しかし、それこそFさんが暗に望む
「特別扱い」となるので、しない方が無難です。

4「褒めないといけないのではないか」は、
思い切って担当を変えることで
対処できるでしょう。

友人同士などの個人的な関係であれば、
Bさんが応対を考える必要がありそうですが、
あくまで医療機関とその患者という関係を
崩さないためにも、個人的な関係に
なりかかった時点でリセットします。

まして、この事例の場合は
Bさん自身が精神的負担を感じています。

先に述べたように、
「世慣れていない人」を好む傾向にあるので、
変更後のスタッフの選出には注意が必要でしょう。

しかし、Bさんが、担当替えにより
「見捨ててしまったような罪悪感」を
覚えるかもしれません。

この場合は、Fさんが来院した時には
声をかけるようにするなどし、
Fさんの存在は認めるようにしていくことで
解消されるでしょう。

公共の機関として「できる範囲で」対処することが大事

Fさんのような患者さんは、
予防歯科経営という視点から見た時には
優先度の高い患者さんです。

そして、
決して悪意があるわけではないのは、
わかると思います。

また、良く思ってくれている事自体は
嬉しいものです。

仮に無理をしてFさんに合わせてしまうと、
長続きしません。

また、合わせることは
Fさんに主導権を渡すことに繋がります。

・歯科医院としてできる範囲で対応する
・公平性を失わない

このように対処していくことが、
息の長い予防歯科経営に繋がっていくでしょう。