最近、街ゆく外国人がとみに増えた、
そう思いませんか?

訪日・在日外国人は増加の一途をたどっており、
都市部を中心に外国人患者応対が
課題となってきています。

今後はオリンピック、また小学校で英語が
教科化される2020年を目途に
外国語指導助手(ALT)の増員も
十分に考えられるため、
郊外でも意外とのんびりとはしていられない
状況であると言えます。

外国人患者、
というと一番に思い浮かべるのは、
やはり言葉の壁ですね。

一体どのように対応すればいいでしょうか。

まずは、通訳を受付スタッフに
担当させた事例から見ていきましょう。

「英語対応可」を掲げたA歯科

A歯科医院の受付Bさんは、
アメリカ留学の経歴があります。

「英語ができる」という理由で、
A院長にスカウトされて入職しました。

ちょうど校医をしている
中学校の外国語指導助手(ALT)が
メンテナンスで通院を始めた頃で、
そのALTも院長も「Bさんが来てくれて助かる」と
喜んだそうです。

A院長は「Bさんがいれば、
もっと多くの外国人が来てくれるかも」と思い、
「英語対応可」をホームページや看板などで
広報し始めました。

徐々に効果は上がり、
ALTが同僚に紹介したことも功を奏し、
週に2人ぐらいは外国人患者が
A歯科医院を訪れるようになりました。

しかし、
この頃から少しずつ問題が出始めます。

意外と気づかない、にわか通訳の問題点

「Bさん、ちょっとメンテナンスルームに来て下さい。」

ALTのメンテナンス担当の呼び出しを受け、
Bさんは作業を中断して
メンテナンスルームに向かいました。

「ごめん、忙しいのに…」
メンテナンス担当のCさんが
申し訳なさそうにしています。

「ううん、大丈夫。どうしたの?」

「たぶん、COが気になってドクターに
診てほしいみたいなんだけど…、自信無くって…
聞いてくれるかな?」

ALTに尋ね、Cさんに伝え、
ドクターの意向をALTに伝える。

…これでゆうに30分はかかります。

たまにならいいけれど、もっと増えたら
ちょっと困るな…とBさんは思いました。

ALTも気を遣っているように見えました。

また別の日には、
銀のクラウンは嫌だと言う外国人患者の対応に
非常に苦労しました。

ドクターの説明に出てくる専門用語は
英語に直しにくいし、
伝わっているかどうか、
納得してくれたのかどうか不安でした。

また、接遇上の問題もあります。

Bさんは大学生の時に留学したため、
ビジネス英語に触れる機会は
あまりありませんでした。

「こういう時は、~と言ってくれた方が嬉しいわ。」

と外国人患者にやんわり指摘されて、
自分の話す英語が「職業人としての英語ではない」と
気づいた時にはとても恥ずかしく感じ、
相当落ち込みました。

患者さんは、友達ではないのです。

いくつかのリスク

ここまででお分かりのように、
英語を話せるスタッフに通訳を
兼務させることには、
いくつかのリスクが伴います。

・本来の業務に支障が出るリスク
・ニュアンスも含めた誤訳のリスク
・スタッフに与える心理上のストレス

大まかに分類するとこのようになります。

また、A歯科の場合、通訳業務がBさんに
集中しているということもリスクのひとつです。

Bさんが退職したら、外国人患者の応対は
できなくなってしまうかもしれません。

リスク回避しつつ対応していくには?

こういったリスクを回避しつつ、
急に訪れる外国人患者に対応していくためには、
歯科医院全体としての予防的な対応が欠かせません。

具体的には、
① 翻訳サービス会社と契約しておく
② 相談先を探しておく(医療通訳紹介機関など)
③ 抜歯後の注意など、定型的なことがらは翻訳して文書化しておく
④ イラストや写真を使って説明するようにする
などです。

イラストや写真を使い、視覚的情報を補うことは、
日本人患者にも利益を多分にもたらすと思います。

手元の写真に簡単な説明を加えて
スライド化するサービス・ソフトも
出てきていますから、
PowerPoint等のスライド作成ソフトで
作成するのは手間だ、
と感じる方は、
こういったサービスやソフトを導入するのもひとつの手です。

また、滞在期間が長期にわたる外国人の多くは、
簡単な日本語でゆっくり話せば
きちんと理解できるそうです。

「主語の省略が多い」といった
外国人がわかりにくい日本語の仕組みに
気を付けさえすれば、
日本語でコミュニケーションを取ることは
十分可能なのです。

外国人応対も、予防的な考え方で

言葉が通じないことは、
確かに大きな壁ではあります。

だからといって、
それを理由に診察を断るなどとは考えられないことが、
地域の歯科医院の悩みどころだと思います。

まずは、予防的にできることからやっていくことが
大切なのではないでしょうか。

外国人だから外国語と杓子定規に考えず、
自分たちでできることをやっていく。

こういった心構えこそが、
外国人患者との信頼関係を
紡いでいくに違いありませんし、
周りまわって地域の日本人からの信頼にも
つながっていくでしょう。

追記
とはいっても、
本当に外国人が患者さんとして、
医院にきたらやはり緊張しますよね。

最近外国人患者が来るようになったなぁ。

そう感じているなら、
やはり、プロの通訳に勝るものはありません。

最近では、
リーズナブルな多言語通訳サービスも
登場しているようです。

外国人もきちんと受け入れる準備をすることは、
避けて通れないでしょう。