「前の歯医者さんで詰めた詰め物が取れてしまった」
「入れ歯が痛くて・・・」という理由で
転院する患者さんは案外多いと思います。

歯科医院を受診することが
全くの初めてならともかく、
「前の歯医者さん」
「作った入れ歯が合わない」という言葉が
出てくるということは、
当然これまでかかりつけの歯科医院で
治療を受けていた、ということですね。

通常、
歯の不調や入れ歯などの不具合がある場合、
かかりつけの歯科医院で
治療を受けるはずですよね。

ところがわざわざ別の歯科医院で
治療を希望するということは、
前の歯科医院で治療を受けたくないから、
ということになるでしょう。

つまり、
これまでこの患者さんが通っていた歯科医院は、
既存患者を一人失ってしまったことになります。

前の歯科医院はなぜ患者さんを失ったのでしょうか?

今回は転院先の歯科医院で、
新しい患者さんをリコールに定着するためには
何が必要なのか?
についてお伝えしたいと思います。

■なぜ患者さんが流出してしまったのか?

私はこれまで何件か歯科医院で
仕事をしていますが、
過去に勤めたある歯科医院の患者さんが
激減していると耳にしました。

衝撃的ですよね?

出来ればそんな状態にはなりたくない!
全ての院長はそう思うでしょう。

でも、
それを聞いた時、
率直に「ああやっぱりそうか」と感じたのです。

その歯科医院には患者さんが来なくなる要素が
たくさんあったからです。

その歯科医院は次のような特徴がありました。

① 挨拶もなくいきなり治療を始め、治療を終えると無言で去っていく
② レントゲン撮影をしても、患者さんにわかるように説明しない
③ 患者さんの前で歯科医師がスタッフに怒鳴る(ボケが!!という罵声でした)
④ ユニットにタービンが差したまま
⑤ ベテランスタッフが新人にきちんと指導していないので統一感がない

患者さんが激減した5つの理由を挙げましたが、
ここで注目したいのは
「歯科医師の腕が悪いから」という理由がないことです。

患者さんは治療の上手下手はわかりません。

中には「いつまで通っても治らないから
先生の腕に問題がある」と考える人もいますが、
転院する理由の大半は技術面ではないのです。

患者さんの転院の大きな理由は
上記の①②に該当する
「説明不足によるコミュニケーションの欠落」です。

患者さんの不調を聞き、
いきなり削り始める。

これでは患者さんはびっくりしますよね。

なぜ痛みがあるのか?

考えられる理由をきちんと説明し、
削る必要性があることを伝えずに
治療を始めると、
患者さんは不信感でいっぱいになります。

次の来院時は、
初診のときには見えなかった他の部分、
つまり③④⑤に該当する医院全体の
「悪い」部分が見えてきます。

こうなってしまうと、
この歯科医院全てが悪いイメージしか
持つことができず、
「二度と行かない」という気持ちになってしまいます。

いくら技術が優れていても、
患者さんにとってはその歯科医院は
最悪なイメージしか残らず、
リコールの案内が来ても
まず予約を取ることはありません。

歯科治療は患者さんとの信頼関係が
何よりも重要です。

信頼関係を築くためにはまずカウンセリングです。

カウンセリングで患者さんの口腔内の状態や
治療法などを説明し、患者さんの疑問点や希望などを
聞いて双方の合意を得ることで、
はじめて治療がスタートします。

カウンセリングなど皆無であった
上記の歯科医院の患者さん離れは
当然といってもいいでしょう。

付け加えると、
スタッフもたくさん辞め、
残っているのは開業当時のスタッフ3名だけ。

スタッフが定着しないところにも、
この歯科医院の患者流出に繋がっているのでしょう。

■新患を定着させるためには、まずは丁寧なカウンセリング

他院から転院してきた新患を定着させるためには、
まずは丁寧なカウンセリングを行うことです。

前の歯科医院に不満を持っている患者さんは、
まず説明をしてくれる歯科医院を求めているはずです。

患者さんの話を聞き、
患者さんと一緒にレントゲン写真を見ながら
なぜ痛みが起きているか、
どのような治療が必要かを説明します。

そして一方的にならないよう、
患者さんの希望や疑問点などを聞く時間を
設けることも大切です。

もし患者さんが望む治療ができない場合でも、
聞いてあげることによって疑問点は解消します。

もし治療計画に納得せず、
別の治療法を希望する場合は
セカンドオピニオン先を紹介してあげるのも
ひとつの方法です。

治療途中で思うような結果が得られず、
治療が長引いてしまったとしても、
歯科医師の口からその都度説明があると、
患者さんも納得して根気よく
通院してくれるものです。

治療途中にセカンドカウンセリングを
挟むことも有効です。

これはチェアサイドで十分で、
今の状況や今後の治療方針などを説明します。

こうすることで患者さんの不安を
軽くすることができるだけなく、
「きちんと説明してくれる、いい歯医者さんだな」と
再認識させる効果も期待できることでしょう。

とにかく一対一で向き合うことが
患者さんを定着させるスタート地点になるのです。

■リコールに定着させるためには、スタッフ一丸となること

転院してきた患者さんの治療が終わった後は、
メンテナンスへの来院を定着させることが課題となります。

患者さんにしても、
もう治療で通うのはこりごりでしょう。

患者さんにとってもっとも効き目があるのは、
歯科医師の口から伝えられることです。

今の良い状態をキープし、
歯を長持ちさせるためには
定期メンテナンスが何よりも大切なことを
歯科医師の口から伝えられると、
必然的に「来なければ」という心境になると思います。

その上で、歯科衛生士や助手、受付スタッフが
メンテナンスの案内を行い、
スタッフ一丸となって患者の意識を予防へと
向けさせるようにしてみて下さい。

私が現在勤めている歯科医院は
他院からの転院患者さんが多く、
リコール率も悪くありません。

それは先生がカウンセリングをとても丁寧に行い、
治療後のメンテナンスがとても大事であることを
先生の口からしっかりと伝えているからだと
確信しています。