
歯科医院を「痛くなってから行く場所」から
「健康を守るために通う場所」
へと変えていくためには、まず患者さんの
気持ちを理解することが欠かせません。
私たちにとっては当たり前になっている診療環境や
流れも、患者さんの立場から見ると、大きな不安や
ストレスにつながっていることがあります。
歯科医療に携わる立場では気づきにくい、患者さん
の考え方や心理状態に目を向けていきましょう。
選ばれる歯科医院になる工夫
「新規の患者さんから選んでもらえる医院に
なること」は、安定した経営に欠かせません。
そのために、SNSでのアプローチや看板の設置
など、どの医院も工夫を凝らしている
ことと思います。
その一方で、意外と見落とされがちなのが
歯科医院に恐怖心を抱えている層への配慮です。
私たち歯科医療従事者が思っている以上に、
多くの人が歯科医院に対して何らかの苦手意識や
抵抗感を持っています。
その理由を深く掘り下げて考え、
「ここなら安心して任せられる」
「ここなら通い続けられそう」と感じてもらえる
環境を整えることこそが、他院との差別化に
つながる大きな武器となるでしょう。
歯科医院を苦手だと思う人の理由
患者さんが歯科医院に対して抱く「苦手」という
感情は、決してわがままではありません。
多くの場合、過去の体験や本能的な不快感が
影響しています。
主な理由を整理してみましょう。
痛みへの恐怖(過去のトラウマ)
幼少期に「無理やり治療された」
「治療がとても痛かった」といった経験が、
大人になっても記憶に残り、強い拒否反応として
表れているケースがあります。
独特な「におい」と「音」
歯科特有の薬品のにおいや、歯を削る際のキーン
という高音を苦手と感じる人は少なくありません。
苦手意識による強い緊張状態から、吐き気や頭痛
などの体調不良を引き起こすこともあります。
視界が遮られることが苦手
ユニットに仰向けになり、視界を遮られた状態で
治療が進む状況に、大きなストレスを
感じる人もいます。
閉所恐怖症や先の見えない状況が苦手な人
にとっては、「何をされるか分からない」
という不安が恐怖心を増幅させます。
口の中に水が溜まることが苦手
唾液や水が口腔内に溜まる感覚に不快感を覚え、
「息がしづらい」「溺れるような感じがする」
と感じる患者さんもいます。
嘔吐反射が出やすい
器具が喉に近づいたり緊張が強まったりすると、
吐き気を感じやすい人は少なくありません。
また、口に水が溜まる感覚や人の指が口に
入ること、印象材のにおいや食感なども
不快感につながりやすく、吐き気を催しやすい人
にとって歯科医院は苦手な場所となりがちです。
怒られるのではという心理的負担
「どうしてここまで放置したのですか」と
叱責されるのではないかという不安から、
受診をためらっている患者さんも多く存在します。
具体的な対策例
これらの苦手理由を一つずつ解消していくことが、
ホスピタリティの向上につながります。
五感へのアプローチ
歯科特有のにおいを和らげるために、待合室や
診療室にアロマを取り入れたり、
リラックスできるBGMを流す工夫が有効です。
必要に応じて、ヘッドホンの着用(機械音の遮断)
や目元を隠すタオルにアロマをかける、
笑気麻酔の導入なども検討してみましょう。
痛みへの配慮
表面麻酔の使用や麻酔液を人肌に温めるなどの
ハード面の工夫はもちろん、
「今から少し響きますよ」といった細やかな
声掛けも、患者さんの安心感を大きく左右します。
カウンセリングの充実
必要に応じて、ユニットではなく
カウンセリングルームで、治療に対する
希望などを丁寧に聞き取ることも有効です。
インフォームド・コンセントを徹底し、
患者さんに「自分の意思が尊重されている」
と感じてもらうことが重要です。
否定しないコミュニケーション
状態が悪化している患者さんに対しても、
まずは来院した勇気を称える姿勢が大切です。
「一緒に治していきましょう」と前向きな声掛けを
心がけ、継続的な受診への意欲を引き出します。
まとめ
歯科医院に苦手意識を持つ患者さんの背景には、
さまざまな要因があります。
その理由を理解したうえで、環境づくりや声掛け、
説明の工夫を重ねることが、安心して
通い続けられる歯科医院づくりにつながります。






