歯科衛生士は
患者さんの口腔内の状態を整えることが仕事です。

そこにどんな言葉がけがあるのでしょうか。

優しい言葉だけでなく、
時には厳しい言葉が必要な場合もあります。
実はそれが、
患者さんに対して真摯に向き合っている
ことにもなるのです。

患者さんにはまず丁寧な説明が必要

患者さんにとって、
初めてのスケーリングやクリーニングの際、
歯周ポケット数値や動揺度、
出血や排膿の有無などを調べますよね。

その結果はきちんと患者さんに伝えていますか?

今更ですが、患者さんが
この検査結果がいったい何を意味しているのか
を知ることにより、自分の口腔内の状態を把握して
お口の中の健康について考えてもらう
ことを
目的としています。

ひととおり検査を終えたあと、
今の検査はいったい何だったかについて、
担当する歯科衛生士は、
モニターや資料などを用いて
患者さんに説明を行います。

数字が大きいほど状態が良くないこと、
出血や膿が出ることは
それだけ歯肉の状態が悪いことを
患者さんにまずわかってもらうために
必要な時間ですよね。

この説明により、
これまで何度も来院している患者さんは
数値が改善していると安堵し、
逆に悪くなっていれば不安になると思います。

しかし、何度施術を受けても
その意味があまりわからない患者さんも
実際います。
特に、スケーリングが全く初めて
という患者さんにとっては、
耳元で聞こえる2や3や4などという数値が
いったい何なのかが全くわかりません。

担当の衛生士が時間を取り、
初診の患者さんにわかりやすく噛み砕いて説明し、
『なぜこのような検査やスケーリング、
クリーニングが必要なのか?』
『なぜ定期検診が大切なのか?』
を繰り返ししっかりと話すことで
患者さんにわかってもらうようにします。

この説明は、
予防治療に力を入れている歯科医院なら
必ず行っていると思います。

しかし、中には検査をするだけで
患者さんに十分な説明など行わず、
そのまま歯石除去を行う
歯科医院もあると聞きます。
そのような説得力のない施術では、
患者さんは自分の口腔内に対する意識を改めたり、
維持したりすることは残念ながらできません。

その結果「別に痛くもないし、来なくてもいいや」
と歯科医院から足が遠のくのです。
リコール率が上がらない歯科医院は、
まずこの説明不足に問題があるかもしれません。
一度、振り返る必要があるかもしれませんね。

患者さんのお口の健康を維持する
エキスパートであれば、
歯周病の怖さや定期検診の重要性を
納得してもらうための説明を行うのは、
ひとつの義務でありプライドでもあるでしょう。

そこは施術の上手下手以前の問題になってきます。

患者さんに危機意識を持ってもらうなら、敢えて厳しい言葉も・・・

何度かリコールで来ていた患者さんが
突然来なくなる
ことがあります。

引越しや体調の問題など、
患者さんの都合もありますが、
突然「サボる」ようになった患者さんは、
しばらくするとまたふらりと戻る傾向があります。

この時の状態は
あまり良くない
ことがほとんどです。
ポケット数値は高く、
出血や排膿も伴うことが多いのは
経験しているのではないでしょうか?

ここで歯科衛生士は
患者さんに危機感を持たせるために、
はっきりと伝えることも必要
になってきます。

「しばらく来院されなかった間に
ずいぶん状態が悪化しており、
歯ぐきが相当腫れています。
このままにしておくと、
近い将来歯周病が進行して
歯が抜けてしまう恐れがあります」

とストレートに伝えてみてください。

患者さんが気を悪くするから・・・
と遠慮する気持ちはわかりますが、
ここは心を鬼にして伝えてみてください。

そして、忘れてほしくないことは、
真面目に歯のケアを行えば
良い将来が待っている
ということも伝える
ことが大事です。

そんな場面が実際にあった場合、
前回の施術できちんと定期検診の重要性を
伝えることができたかどうか

を振り返ってみてください。

患者さんの口腔内の健康を守るのは、
歯科衛生士です。
担当制であってもそうでなくても、
定期検診の重要性やお口の中の健康管理の大切さを
きちんと説明できていなければ、
患者さんには危機感を持ってもらえません。

もし前回にできていなければ、
今回がチャンスです。
はっきりとストレートに伝えることで
患者さんに
「ちゃんと来なかった自分が悪かった」
と思ってもらうと同時に
「この衛生士さんは、
ちゃんと自分のことを考えてくれているから、
ずっとこの人に担当してもらいたい」
と思ってもらえるような説明を行いましょう。

患者さんも、
自分から好き好んで歯を失いたくはありません。
歯周病で歯を失ったら
食べ物が美味しく食べられない、
見た目が老ける、
脳の働きが衰える、
などマイナス要素を印象付け、
「そうなりたくないなら
きちんと定期健診に来てくださいね」
と言い切りましょう。

患者さんは
「厳しいことをハッキリと言うなあ」
と苦笑いするかもしれませんが、
患者さんに
「この衛生士さんならきちんと通おう」
と思ってもらうためにも、
このような言い方は時には効果的なのです。