「こんなこと言ったって、
わかってもらえないかもしれない」

自費治療や定期メンテナンスを
一生懸命勧めているのにもかかわらず、
わかってもらえないことが続くと、
こんな風に思ってしまうことが
あると思います。

TCやカウンセリング担当でなくとも、
受付で希望日以外の日程の予約を提案する時、
レントゲン撮影の承諾を得る時、
などなど。

ありとあらゆる他者への投げかけが、
最近なぜか滑る気がして、少し悩んでしまう。

誰でもあることだと思います。

自分の感覚を疑ってしまう時って?

きっかけはほんのちょっとしたことです。
例えば、これはイケそう!と思う患者さんに、
「これからも何でも食べれるお口でいるために、
ぜひ、定期通院なさってください。」
といつも通りに投げかけた結果、
「いや、今回はまあいいわ。」
という返事が返って来た。

一回だけなら
「そんなこともあるだろう」と思うのですが、
何回か続いたりすると不安になってきます。

自分の感覚を疑うようになるからです。

この「自分の感覚を疑う」ことが、
そもそもの始まりです。

この反省の仕方は危険

そして、「え?なんで?」となった後で
やってしまいがちなのが「反省」です。

「こういう風に言ったからかな…」
「ああ言えばよかったのかもしれない」
「配慮が足りなかったかもしれない」

などと考えをめぐらすことです。
反省には、実は
「自分を否定する」という側面があります。

反省により自分の感覚を否定し続けることは、
「自分はおかしい、間違っている」ことを
証明することにつながります。
自分自身の間違い探しをしている状態を
続けてしまうのです。

この段階で、
「患者応対フレーズ集」などの本を読んで
自分に似たケースを探す、
人に相談する、
などをする人が多いですが、
多くの場合気休めに過ぎず、かえって
「自分はやはりおかしいのではないか」という
自分自身への疑いをますます強めることに
なってしまったりすることもあります。

反省は実は危険なのです。

では、どうすれば?

では、反省をしないとして、
どうしたらよいのでしょうか?

それには、
「できなくてもいい」と選択肢を増やす
ことが非常に有効です。

悩んでいる時には、いつの間にか
「予防歯科の有効性を
わかってもらわなくてはならない」
「給料を増やすには
自費の売上をもっと上げるべき」
「当院の安定のために、
予防歯科に移行しなければならない」
といったような、
「べき思考」に陥り、視野も狭くなっています。

「べき思考」に捉われてしまった人の言動には、
どこか追い詰められたような切迫感を感じるもの。

焦って余裕を無くした人の話に、
患者さんは耳を傾けてくれるでしょうか?

余裕が無さそうだなあと思う人に、
相談を持ち掛けたりするでしょうか?

「早くこの場から離れたい」と
思わせてしまうのではないでしょうか?

まずは、余裕を取り戻すために
選択肢を増やすことが大事です。
余裕をいくばくか取り戻せば、
見えてくることがあるでしょう。

院長や幹部スタッフの役割

幹部スタッフや院長は、
上のように悩むスタッフが
自分を過剰に責めてしまわないように
見守る存在です。

そして、
「あ、この人は今自分を責めているな」
と感じたら、
「できなくても大丈夫だよ」
と選択肢を増やしてあげるといいでしょう。

もちろん、自分自身に対しても
同様にすると良いと思います。

普段からよくコミュニケーションを取っておけば、
早いうちに手を打つことができるでしょう。

仕事を通じてこういった心の在り方を
教えていくことは、
院長や幹部スタッフの
重要な役割ではないでしょうか。

患者さんにも応用が利く

選択肢を増やすという方策は、
患者さんに対しても応用が利きます。

  • 予約日時は1つだけでなく2つ提案する。
  • ホワイトニングの薬液(メニュー)は
    選べるようにする。

など、細分化して提案していくようにすることで、
余裕を演出できると思います。
カフェのランチメニューや定食屋が良い例です。

患者さんは、
「この日の○時からはいかがですか?」
と言われると
「この日じゃないと診てもらえないのかしら」
と断りづらくなります。
「この日かこの日なら空いていますがご都合は?」
と聞かれると、
余裕や思いやりを感じるそうです。

開業医やスタッフは意外と余裕が無い

このことは、
様々な職種の人とお話して強く感じました。

拘束時間も比較的長く、
いつも患者さんやスタッフのことを
考えなければならない…。

けれど、もう少しだけ、
自分と自分の感覚を信じてあげて
ほしいなと思います。

余裕が生まれれば、
また違ったやり方が見えてくるかも
しれませんから。