最近では歯に対する健康意識や美意識が高まり、
それとともにホームページやスマートフォンなどの
媒体を通して、実に様々な情報を得ることができる
時代になりました。

その効果もあるのか、
どうも「セラミック治療は予防に最適」と
認識されているように思えます。

確かにオールセラミックなどセラミック系の補綴物は、
保険適用のものに比べると優れた点が多く、
二次カリエスになりにくいということも事実です。

しかし、「セラミック=予防治療」と
思い込んでいる患者さんも多いのではないでしょうか。

■二次カリエス予防に適しているセラミック系補綴物

患者さんに補綴物を選択してもらうとき、
何を基準に選ぶでしょうか?

費用を重視する場合もあれば
見た目の美しさなど、
患者さんによって選択基準は異なります。

特に保険治療を中心とした一般歯科では
「歯にお金をかけたくないから銀歯でいい」と
保険適用の補綴物で治療を進めることも
多いと思います。

しかし、最近の幅広い情報提供力により、
「オールセラミックにすると歯がキレイになる上、
虫歯にならない」と認識する患者さんが
増えてきたように思えます。

セラミックは金属との合着と異なり、
接着性に優れていること、
そしてプラークが付きにくいことから
確かに二次カリエスになりにくい素材です。

ここで患者さんが勘違いしてしまうのは、
「セラミックにすると虫歯にならない」と
思い込んでしまうことです。

セラミックは保険適用素材にはない
優れた点がたくさんありますが、
必ずしも虫歯にならないとは限りません。

つまり、患者さんは、
予防治療の本当の意味を
勘違いしているのです。

予防治療本来の意味を履き違え、
セラミックにさえしておけば
絶対に虫歯にならないものと
思い込んでしまっているのです。

これは患者さんが悪いのではなく、
我々歯科従事者に責任があるのではないでしょうか。

予防治療の正しい意味を
患者さんに理解してもらい、
きちんとメンテナンスに通ってもらうことに
繋げることが私たちの仕事であるのに、
セラミックだけを信じ切ってしまうと、
患者さんの今後の口腔内がどうなるのか
容易に想像できることは、
歯科従事者として反省すべきことではないかと思います。

■説明が不足すると、予防治療に繋がらない

患者さんは、自身の歯を治すことに
気が向きがちです。

そのためオールセラミックなど
審美性に優れた補綴物が入ると、
それで満足してしまう傾向があると
考えられます。

ここからがスタート地点であるはずが、
患者さんにとって
「キレイな歯を取り戻したこと」は
もうゴールに到達してしまっているのでしょう。

予防治療は
「良くなった状態をキープし、
虫歯や歯周病が発症しないように予防すること」であり、
定期検診の来院を促すことを目的としています。

自費診療は確かに収益インパクトが大きい治療です。

しかし、セラミックを入れた途端、
来院しなくなった場合と、
たとえ保険適用であっても、
定期的なメンテナンスで数多くの患者さんが
来院する場合とでは、
どちらが収益に繋がるでしょうか?

目先の利益だけに目を向けていては、
リコール率は上がることはありません。

患者さんにとっても、
せっかくセラミックを入れたのに、
数年後には歯周病でお口の中が
ボロボロになってしまう可能性が
高くなるでしょう。

補綴物を選ぶ段階で必要なことは、
セラミックの美しさや優れた機能とともに、
「セラミックを入れてもきちんと
メンテナンスに通わなければ、
将来的に歯を失う可能性がある」
ということをしっかりと説明することです。

予防治療は補綴物の種類云々ではありません。

きちんとメンテナンスを受けないと、
新たな虫歯や二次カリエスだけでなく、
歯周病で歯を失ってしまいますよ、
ということを強調して伝えなければ、
患者さんに正しい知識を持ってもらえないのです。

デンタルIQが高く、
お口の中の健康に関心が高い患者さんは
予防の意味をきちんと理解し、
定期メンテナンスに通う確率が高いでしょう。

しかし意識が低い患者さんは、
高価な補綴物を入れただけで
自己満足してしまいがちです。

そこをどのように説明するか、
予防治療に繋げることができるかは、
歯科医師をはじめとした
スタッフ全員の使命ではないでしょうか。

患者さんに正しい情報を伝えるのはもちろん、
伝わりやすい情報の方法は
どんなものがあるのか?
情報を伝える頻度は1回きりでいいのか?
またそのタイミングはいつがいいのか?

医院全体で考える必要がありそうですね。