予約でいっぱいの歯科医院と、
そうじゃない歯科医院。
違いはどこにあると思いますか?

…といきなり聞かれても、
ちょっと想像しづらいと思いますので、
2つの歯科医院を事例で比較していきましょう。

どちらもシーンは初診時です。
ちなみに、どちらの医院も
初診カウンセリングは行っていません。

違いはどこにある?

人気のA歯科

D:○○さん、こんにちは。歯科医師の○○です。
P:こんにちは。
D:問診票を拝見しました。
  まずちょっとお口の中を見せてください。
  …はい、いいですよ。
  結構違和感とか、痛みとかありますか?
P:そうですね…噛んだ時に痛い気がします。
D:そうなんですね。
しみたりなどはありますか?
P:うーん、
  そう言われれば冷たいものがちょっと…。
D:(うなずきながら)
  ちょっとレントゲンを撮りましょうか。
  ○○円かかるんですが、いいですか?

そうじゃないB歯科

D:○○さん、こんにちは。歯科医師の○○です。
P:こんにちは。
D:じゃあ、お口の中を見ますよ。
  …はい、うがいしてください。
  ちょっとレントゲン撮りますね。

A歯科とB歯科の大きな違い

A歯科の方の発話量の多さに気づいた人は
多いと思います。
発話量の多さに加え、
歯科医師側(D)の発話の内容に目を向けると、
A歯科の方は患者さんに喋らせるように
していることがわかると思います。
「ありますか?」がそれに当たります。

この「患者さんに話をしてもらう努力」が、
大きな違いと言えます。
そして、この違いが
人気の度合いの違いに直結している
と言っても決して過言ではありません。

よくある不満「話を聞いてくれない」

よくある「歯科医院への不満」に
話を聞いてくれない
というのがあります。

歯科医院側としては十分聞いている
つもりであるにもかかわらず、
患者側としては物足りない思いをしている
ことが多いようです。

この不満は「聞くこと」で解消される
…のは自明です。

しかしながら、
自分からどんどん話す患者さんが
あまりいないために、
そもそも聞く機会を与えられていないと
思ってしまうのです。

話をしてくれないのであれば、聞きようがない。
…確かにそうですよね。

患者さんが話さない理由

ところで、なぜ患者さんは
自分から話さないのでしょうか。
それは、余計な情報を与えたくないからです。

患者さんは、歯科医師は偉いもの
だと思っています。
偉い、までいかなくとも、
自分にはできないことをしている人ですから、
逆らうことはよくない、
くらいには思っているでしょう。

医者嫌いの人が怖いのは、
叱られることや、慣れ親しんだ習慣を
曲げなければならなくなることです。
一般的な健康診断の結果で
「カウンセリングを受けませんか」
などと言われるとなんとなく不安で
怖いですよね。

これと同じで、
例えば「コーラをよく飲みます」
と情報を与えたら
「それは歯に良くないですね」
というダメ出しの反応を予想するのが
多くの患者さんです。

こんな風に考えると、
どの情報もダメ出しにつながる気がしてしまい、
自分からは何も言わないほうが得策、
と考えるのです。

患者さんに話をしてもらうには

では、この話をしない状態を打開し、
患者さんに自分から話をしてもらうには
どうすればよいでしょうか?

先ほどのA歯科の例では、
質問を投げかけることによって、
患者さんに「必然的に」話をさせていましたね。

必然的、というのは
「答える必要がある」ということです。
答えなければ話が進まないので、
患者さんはどうしたって話します。

ポイントは「医療従事者が質問すること」です。

一般の人同士で
「歯がしみたりすることはありますか?」
などと聞き合うことはありませんよね。

「こんなことを聞いてもいいのかどうか
…と迷ってしまう」
こういった不満を、
特にスタッフの方からよく聞きますが、
医療従事者が、
患者さんの健康にかかわることを尋ねるのに
何の失礼があるというのでしょうか。

また、歯科医師の先生方からよく聞くのは
「口の中を見ればすぐにわかることを、
わざわざ質問するのは効率が悪い」
です。
確かに、効率を求めればその通りなのですが、
患者さんに話をしてもらうことを
目的にするのであれば、
質問は格好のチャンスなのです。

患者さんの生の声で裏付けをとる感覚

患者さんの生の声を聴くことによって、
お口の中の状態から類推できる
症状や疾患の裏付けが取れる、
とこのように考えることもできると思います。

定期メンテナンスを勧める時も
同じことではないでしょうか。

「奥歯がすり減っている、歯ぎしりがあるようだ」
で終わらせず、
「なんかあごが疲れているなどはありませんか?」
と聞いてみるなど、
患者さんを思いやるとっかかりは
何かしらあります。

ぜひ、患者さんに話をしてもらう機会を
作ってみてください。