初めてのメインテナンスには来るけど、
その後が続かない。
初めは来るんだから、予防の大切さは
伝えられていると思うんだけど…。
後が続かないのでは、永遠に新患を
集め続けなければいけません。
これでは、予防歯科としての経営は
いつまでも安定しませんよね。
それでは、定期メインテナンスに継続して
来ていただくには、何が必要でしょうか?
A歯科の定期メインテナンスを勧める取り組み
A歯科では、治療終了の患者さんに
定期メインテナンスを勧める取り組みを始めました。
「今のキレイなお口をずっと維持したいですよね?」
「でも、ちゃんと磨けているか心配だという方も
いらっしゃるんです」
という流れで、継続的なメインテナンスを勧めます。
A院長の説明がよかったのか、
大抵の患者さんは予約を取って帰ってくれました。
なかなかの滑り出しとA院長は思い、
ホッとしています。
そして3か月後。
メインテナンスを予約した患者さんはほとんどが来院。
キャンセルは入りましたが、ドタキャンではなく、
ちゃんと事前に断りの電話がありました。
よかった…このまま、このやり方で行けば…
「ごめん、忘れてた」
さらに3か月後のある日。
診療時間中に衛生士のBさんがシャープニングを
しているのをA院長が見かけました。
「あれっ、どうしたの?」
「来ないんですよ、患者さんが」
「ふうん…忘れているのかな?」
「そうですねえ…電話してみましょうか」
電話に出た患者さんは、
「ごめんごめん、忘れてて」と言っています。
「予約を取り直しましょうか?」
「あ、いや…今ちょっと予定がわからないから。
またこっちから電話しますよ」
結局、電話はなかったのですが、深追いは避けます。
代わりに、患者さんが予約を忘れないように、
事前にハガキを出すことにしました。
馴染み患者の無断キャンセル
取り組みから1年が経つ頃。
予約患者Cさんのサブカルテを見ていたA院長は
ある記述に目を留めました。
【▲月〇日 メインテナンス2回目 無断キャンセル】
Cさんは古い馴染みの患者さんです。
Cさんぐらい親しい患者さんですら、来ないのか…。
A院長はちょっと傷ついたような気持ちに
なってしまいました。
なぜ「初回」には来るのか?
Cさんのように「古い馴染み」の患者さんだと、
「熱心に勧めてくれたのに、断ったら悪い」
と感じることが多いものです。
「自分のことを考えて勧めてくれたんだから」
というのが一番の理由であって、
予防の大切さを理解したから来たわけではないのです。
また、「どんなものなのかな?」という、
好奇心もあるでしょう。
いわば、お試し感覚です。
Cさんは、初回で好奇心が満たされてしまったため、
それ以上必要性を感じなかったのではないでしょうか?
正しいことを言われるとウザい?
このようなことがあると、
メインテナンスに来ない
=予防の大切さが伝わっていなかった
と解釈して、
患者さんにより多くの情報を提供すればいいのでは、
と考えがちです。
歯科の先生らしく教育しようというわけです。
患者教育は、予防歯科経営に絶対に必要な要素です。
しかし、あからさまな教育は「押し付けがましい」と
受け取られがちです。
「経営安定には、日計表と予約表の確認は必要です。」
こう税理士に言われたら、どう思いますか?
「相手はお金のプロなんだから正しいことなんだろう」
と思いつつ、何となく煙たい、重い、極端に言うと
「ウザい」と思いませんか?
それよりは、月計表でも一緒に確認して、
問題に気づかせてくれる。
その方が取っつきやすいと感じるし、
ありがたいと感じるはずです。
患者さんに気づいてもらうには
メインテナンスに関しても同じこと。
「正しいことを教えてあげます」的なスタンスが
透けて見えると、患者さんは疎ましく感じます。
事例で言うと、ここでCさんに再び
ガチンコよろしく「予防教育」をすると、
Cさんは「わかってるんだけど…」と思い、
足が遠のいてしまうはずです。
そうではなくて、例えばCさん自身の近況を尋ねたり、
○○がおいしい季節ですね、などと言いながら
さりげなく食生活を訊いたりして、
「あれ、もしかしてヤバいのかも…」
と気づかせるようにすると、
気持ちがメインテナンスに向きやすくなるでしょう。
継続して来てもらうには?
これまでの話をまとめると、
メインテナンスを継続させるには、
・信頼関係が基礎にあり、
・好奇心を刺激して、
・患者さんに気づかせる
ことが大切です。
リコールハガキや電話代に経費や時間を投入するより、
信頼関係構築のための接遇マナー向上や、
初診カウンセリング導入、または、
患者さんの好奇心を刺激できそうなことに投資する。
これらが息の長い予防歯科経営につながることは
間違いありません。