患者さんやスタッフと会話をしていて

「何を伝えたいのか
わからなくなってしまったことがある」

といった経験はありませんか?

また、
相手に自分の思いが伝わらず、
違う解釈の捉え方をされていたことは
ありませんか?

それらは、
言葉を使っての
コミュニケーション不足が原因
と考えられます。

伝えたいことのほとんどが
相手に伝わっていないのです。

そこで今回は、
コミュニケーションを深める
「メタモデル」という
質問術について紹介していきます。

  • 患者さんやスタッフの言葉を
    正確に引き出す方法が知りたい
  • 自分の思いを相手に正確に伝えたい

と思っている方は是非、参考にして下さいね。

メタモデルとは?

私たちは、
毎日様々な人と色んな話題について会話をします。

私たちは
言葉を使うコミュニケーションにおいて、
伝えたい情報を無意識のうちに
「省略」、「歪曲」、「一般化」して
話しています。

それぞれの意味は、次の通りです。

省略…人と話すときに自分が持っている
   全ての情報を言葉にしていないこと。

歪曲…事実をありのまま伝えるのではなくて、
   自分の解釈を加えて、
   理解した情報を言葉にしていること。

一般化…一部の出来事を全体に当てはめて、
    自分が決めつけた思い込みを語ること。

例えば、

「休みの日にデンタルショーに行きました。」

と表現した時、
本来なら色んなことを体験したはずですが、
会話を成立させるために
内容を削ぎ落としています。

本来なら、

「デンタルショーに行ったときに

  • 違うスタッフの○○さんと一緒に行って
  • 新製品の試供品をもらったり、
  • 会場が広くて1周するのに○時間かかったうえに
  • 人が多すぎて疲れた、イライラした」

といったように
内容を細かく話をすると思います。

このように見たこと、聞いたこと、感じたことを
全て表現すると会話は成り立ちません。

しかし、
相手に正確に伝えるには
足りない部分が多すぎるので、
相手は、
あなたが伝えたかったこととは違う解釈をします。

この伝達の際に、
足りない情報を明らかにして、
言葉によるコミュニケーションを
完全な物に近づける質問術が、
メタモデルになります。

質問は具体的にする

メタモデルのテクニックを使えば、
相手の話の失われた情報を明らかにして、
正確なコミュニケーション

とることが可能です。

メタモデルのテクニックは、
「省略」、「歪曲」、「一般化」に
効果的な質問をすること
です。

質問は、

「だれが?」「いつ?」「どこで?」

などの具体的な内容になります。

また、
メタモデルの質問の目的は、
相手を問い詰めることではなく、
無意識の中で失われている情報を引き出して、
コミュニケーションの質を高めること
です。

「省略」に対するメタモデル

メタモデルによる質問は、
全部で12個に分類されます。

今回はその中でも使いやすい7つを
紹介していきます。

1、比較

比較対象が省略されている表現

「この商品は高いね」
「この機械を使えば、ずっと効率的です」

このような表現は、
比較対象が明確にされていないため、
相手のことを客観的に分析することができません。

そこで、
次のようなメタモデル(質問)をして
比較対象をはっきりさせます。

「何の商品と比べてそう思うの?」
「何に比べて効率がよくなるのですか?」

このように比較の対象を明らかにすることで、
客観的に評価することができます。

2、判断

評価や基準が省略されている表現

「彼女は社会人としてだめだ。」

この表現では、評価した人が誰か、
判断の基準がどこに置かれているのか
わかりません。

判断に対するメタモデル

「それは、誰の評価ですか?」

このように判断の基準を明確にすることで、
評価の有効性が判断できます。

3、名詞化

名詞が省略されている表現

「彼女は仕事ができるよ。」

この言葉では、
「仕事」があまりにも抽象的すぎます。

名詞化に対するメタモデル

「彼女の仕事の役割は?」
「後輩に対する接し方がうまいの?」

こうして、
あいまいな理解でしかなかったものが、
より具体的な情報になり理解が深まります。

歪曲に対するメタモデル

私たちは、
物事を伝える時に「自分なりの解釈」などの
主観を交えて言葉にしがちです。

これを「歪曲」といいます。

ここでは、
歪曲によって失われた情報を
明確にするためのメタモデルを紹介していきます。

4、前提

何らかの前提が隠れている表現

「彼女にこの仕事を任せるのは無理だ」

この表現だけでは、
この言葉を発した人が
相手を嫌いだからという誤解を
与える可能性があります。

この言葉に対してのメタモデル

「なぜ、彼女には無理だと思うのですか?」

メタモデルのテクニックを使うことによって、
言葉の裏には、例えば

「彼女は未熟で力不足だ」

という前提が隠れているのが
明らかになるでしょう。

5、憶測

本人から気持ちを聞いたわけでもないのに、
他人の気持ちや考え方を
決めつけること
があります。

例えば
「あの人は私のことが嫌いです。」

といった決めつけの言葉に対して

「どうして、嫌いだとわかるの?」

というメタモデルで

自分の考えが憶測にすぎない
と気づいてくれる可能性が高まります。

一般化に対するメタモデル

一部の人の意見なのに、
つい「みんなが言っているよ」
という表現をしてしまうことがあります。

このように、
一部のことを全体に置き換えることを
「一般化」
と言います。

6、可能性の叙法助動詞

例えば、

「私には、この仕事はできません」

という表現は、
その人が無意識のうちに限界を定めている
場合によく使われます。

この可能性の叙法助動詞に対するメタモデル

「経験豊富なあなたが、
どうしてこの仕事ができないと思うの?」

こうした質問をすると相手から
反論がある場合が多いです。

しかし、
問題点を明らかにすると、
その解決方法を考えることができ
相手の選択肢を広げてやることができるのです。

7、普遍的数量詞

例外を排除してしまう表現を
「普遍的数量詞」と言います。

「みんなが」、「すべて」、「必ず」、
「決して~ない」、「いつも~ない」
などの
表現が含まれています。

全ての可能性を肯定
または否定することによって、
例外を認めない言い方です。

例えば

「彼女はいつも私の意見を認めてくれない」
「東京の人は冷たい」

といった言い方が普遍的数量詞になります。

普遍的数量詞のメタモデル

  • 「いつも意見を無視しているのですか?」
  • 「親切な東京の人に
    会ったことはないのですか?」

その思い込みに例外がないのかを、
相手に思い起こさせます。

ここまでのメタモデルを
完璧に覚えなくても
「何となくわかった」くらいでOKです。

次回のメタモデルを使った実践編で、
さらに理解を深めていきましょう。