突然ですが、あなたの歯科医院では
防災対策はされていますか?

2011年の東日本大震災以来、
国や自治体だけでなく、民間企業レベルでも
防災対策が見直され始めました。

今年に入ってからも
熊本地震や鳥取県中部地震が相次いで起こり、
さらには近い将来の関東地震や
東南海・南海トラフ地震の発生が予測されています。

日本のどこで大規模な地震がおきても不思議ではない
とも言われていて、まさに「明日は我が身」
という言葉がふさわしい状況です。

震災に備えて、
歯科医院としてどんな対策ができるでしょうか?

被災時に備えた対策として、
備蓄や避難マニュアル作成、
家具の固定や薬品の管理体制の見直し
などが考えられますが、
今回は歯科医院に勤める者全員が
知識として持っておきたい心構えについてご紹介します。

1.診療時間内に震災がおきたら

歯科医院全体としてまず想定しておきたいのが、
診療時間内に地震が起きたケースです。

例えば、津波の浸水や地盤の液状化が
想定されている場所に歯科医院が立地している場合には、
水が引かなければその間患者もスタッフも自宅には帰れない
ことが考えられます。

医院を取り囲んでいる水は、
いわゆる雨水のようなものではなく、
上下水道や濁流が混ざり合った汚水。
直接触れるのは危険です。

直接津波や浸水の被害が無いケースでも、
規模が大きい地震では、患者やスタッフの自宅が
遠くなれば遠くなるほど帰宅が困難になるでしょう。

また、歯科医院が入っているビルが指定緊急避難場所や
津波避難ビルに指定されている場合は、
歯科医院の外からも避難者がやってきます。

さらに歯科医院のスタッフが医院内にとどまっている間は、
スタッフには医療人としての行動が求められます。

このような状況から考えて、
診療時間内に被災した場合、
スタッフは数日間家に帰ることができないと
心積もりにしておく必要があります。

事前に家族にもそう伝えておきましょう。

歯科医院の規模や立地、勤めるスタッフの人数に応じて、
帰宅が困難になったケースを想定した非常時用の防災道具や
備蓄などの対策が必要です。

2.最重要!何よりも自分の命を最優先に

当然ながら、歯科医院内で被災した場合、
院長以下歯科医院に勤めているスタッフには
医療従事者として患者を守る義務が発生します。

しかしながら何よりも最優先するべきなのは、
「自分の命」です。

まず自分が生きていなければ、
医療人として周りのスタッフや患者を守ることはできません。

ここだけは間違えないように心にとめておいてほしいと思います。

3. カギを握るのは、緊急地震速報から数秒間の行動

気象庁によると、
『緊急地震速報は、地震の発生直後に、
各地での強い揺れの到達時刻や震度を予想し、
可能な限り素早く知らせる情報のこと』とされています。

強い揺れが到達する前に緊急地震速報のアラームが鳴ることで、
それぞれが身の安全を確保し、大規模な震災から命を守ることが
期待されています。

緊急地震速報から実際に揺れが起こるまでは、数秒から数十秒。
短い時間ながら、この数秒間の行動が、
被災時に命を守ることができるかどうかの大きなカギを握っています。

身近な場面で考えると、

  • 火を消す
  • 机の下などに隠れる
  • ヘルメットをかぶる
  • 扉や窓を開け避難路を確保する

などの行動が考えられます。

しかし、歯科医院においては

  • 患者の口腔内に入れているドリルなどの器具の動きを止める
  • 口腔内に入っている装着前の補綴物や器具を取り出す
  • アルコールランプなどの火を消す
  • 酸素ボンベの元栓をしめる
  • 横たわっている患者をすぐに起こす

など、歯科医院特有の行動も必要になります。

4.揺れが起きたら、「声を出し合う」

緊急地震速報の後に実際に大きな揺れが起きた場合、
何よりも大事なのは、頭を守ることです。

仮に腕や足にケガをしたとしても逃げることはできますが、
頭を打ち意識を失っては自力で避難することが
できなくなってしまいます。
まずは机の下に隠れるなど、頭を守りましょう。

机の下などに隠れている間は、視界が限られます。
限られた視界の中で周りの状況を把握するためには、
揺れている最中にも声を出し続けることが有効だと言われています。

この時の声出しは、「きゃー!」「怖い!」といった
叫び声ではありません。
こういった声は周りの恐怖心をあおってしまうだけです。

周りの患者からはこのような声が出てくるかもしれませんが、
歯科医院に勤めるスタッフとしては控えましょう。
ふさわしい声出しは、このようなものです。

  • 「○○さん、大丈夫ですか!」
  • 「みなさん、落ち着いて机の下に隠れてください!」
  • 「△△さん、診察室はどうですか?受付はみんな机の下に隠れています!」
  • 「廊下の照明が落ちました!近づかないようにしてください!」

というように、自分の目に見える情報を発信し、
目には見えない人達の安全を、声を出し合って確認するのです。

声を出すことによって頭を冷静に保つこともできます。
スタッフ同士はいざという時には率先、協力して声を出し、
身の安全を確保してください。

まずは防災士さん等の講演や話を聞く機会をつくる

そのほかにもさまざまな具体的な対策が必要になりますが、
それはお住まいの地域によって変わってきます。

まずは歯科医院のある地域の震災発生時の想定を確認し、
歯科医院に勤めているスタッフ全員で共有することが第一歩です。

自治体によっては、
防災士さんが無料で歯科医院に講演や耐震診断を
しにきてくれるところもありますので、
確認して利用みてください。

  • 建物の耐震診断
  • 備蓄品・防災道具の準備
  • 薬品の管理や家具類の固定
  • 避難マニュアルの作成
  • カルテや診療データの管理方法
  • 震災後の医院の再開方法

など、考えるべき対策は山ほどあります。

これらの対応は日々の業務に追われて
先延ばしになってしまいがちなので、
準備が滞らないように、
スタッフそれぞれに担当を決めるのもいいでしょう。

いざという時に落ち着いて行動できるように
歯科医院全体で万が一に備え、
自分の命と患者の命を確実に守りましょう。