親子連れの患者さん、
特に子どもは歯医者さんが嫌いな子も多いですよね・・・
そんな親子連れに「予防歯科」の第一歩として
どんなアプローチをすればよいのでしょうか。

意外と、歯医者にお子さんを連れてくる
親御さんの中には
「子どもの歯は、どうせ生え変わるんだし
少々の虫歯くらいは仕方ない」
とか
「フッ素さえ塗っておけば虫歯にならない」
なんて勘違いをしている方は
たくさんいらっしゃるのではないでしょうか。

それが間違いだということ
もちろんあなたならお分かりですよね?

そんな考えを持つ親御さんの
間違った意識をまず取り除く。
予防の正しい認識を持ってもらう。
そのためにはどうやってアプローチするのが
効果的でしょうか?

子供の予防歯科は、まずは親の教育から

予防歯科が浸透してくることで、
子どもが虫歯にならないよう
フッ素塗布やシーラントなどを
希望する親御さんがとても増えているのを
実感されている方も多いのではないでしょうか。

では、なぜフッ素は虫歯予防になるのでしょうか?
親御さんはそのことをきちんと理解していますか?

実際に、
「予防のための来院はいらない」
という考えの親御さんもまだまだ多いのが実情です。

それって虫歯になってしまったら
また治療に連れて来るという考えですよね。

このように、
一部の予防歯科が浸透し始めているとはいえ
親御さんの認識はまだまだ
「虫歯になったら治療に連れて来る」
という治療型の考え方が根付いています。

ではそもそも、
「なぜ虫歯になるのか」を
親御さんはどこまで理解していると思いますか?

歯科医療に従事していない人であれば、

  • 甘いものを食べるから虫歯になる
  • 歯みがきをしないから虫歯になる
  • フッ素は虫歯予防になる

といった考え方は当然ではないでしょうか。

でも、難しいことを考える必要はありません!

  • なぜ虫歯になるの?
  • なぜ歯みがきが必要なの?
  • フッ素がどういった役割を果たすの?

この大きなつのポイントさえ理解すればOKなのです。

つまりあなたはこの3つのポイントを
患者さんに分かりやすく説明する役割を担っているのです。

歯を残して健康な生活を送るという「予防」の理念を
わかりやすく患者さんに伝えるために・・・

まずは、なぜ虫歯や歯周病になるのか、
そのサイクルを知ってもらう必要があるのです。

難しい専門用語は意識して使わない

虫歯や歯周病のことを知ってもらうために
一生懸命説明しても・・・

「脱灰」「再石灰化」「ミュータンス菌」「Ph値」・・・

ついつい、こんな専門用語の
オンパレードになっていませんか?

専門用語を並べられても、
きっとあなたの患者さんは
「何のことだか、ワ・カ・リ・マ・セ・ン」
と思っていますよ!

全てが虫歯に関する重要なキーワードですよね。
でも、実は患者さんは
「聞いたことはあるけど、意味はよく知らない」
というのが実情なのです。

これを書いている私自身も面倒くさがりのため、
患者さんの立場で考えたら
「うーん、難しすぎて意味がわかんない。
 はいはいってゆっておこう・・・
 とりあえず歯みがきをちゃんすればいいんだよね。
 あと3ヶ月に1回フッ素塗りに来ればいいんでしょ?」
ってきっと心の中で思ってますよ。

正直なところ、
難しい専門用語を並べられても理解できないのです。

「子どもが歯みがきイヤがるからできません。
何とか歯みがきするけど、ウチの子は無理なので、
悪くなったら治療に来ます・・・」
ではどう見ても治療型です。

この考え方から、どうやって予防型に意識を向けるか。
これが歯科従事者としての大きな課題です。
その第一歩!
それはとにかく難しい用語を使わないことです。
あなたが日常的に使っている言葉
本当に患者さんに伝わっていますか?
あなたの説明をぼーっとした顔で聞いていませんか?

患者さんにとって難しい言葉で説明することは、
伝わらないのでムダなだけです。

親に予防意識を持ってもらうために

子供の予防歯科を普及させるために。
歯科従事者が行うべきなのは、
親自身に予防意識を持ってもらうことです。

大人は自らの意思で行動しますが、
子供はそうはいきません。
中学生になる頃までは親の仕上げ磨きも必要です。

親が予防歯科に関心を持って
自ら行動を起こすように
まず親へアプローチを行います。

コツは専門用語を羅列しないこと。
ポイントだけを簡潔明瞭に伝えます。

  1. 虫歯のできる仕組み(歯が虫歯菌で溶かされる)
  2. 歯みがき(虫歯菌が大好きな食べかすをなくす)
  3. 唾液の大切さ(ちょっとだけ溶けた歯を治してくれる)
  4. 自宅と歯科医院でフッ素塗布(歯を強くして虫歯菌から守る)

このつのポイントを伝えるだけで十分なのです。

「再石灰化」や「脱灰」といった専門用語は
難しく聞こえてしまいそれだけで
拒否反応を示してしまう人もいるかも知れません。
使わないほうが伝わりやすいでしょう。

一方で意識が高い患者さんには
より一層予防への関心が高まると思いますので、
少しずつ専門用語を織り交ぜて説明するのが効果的です。

子供向けと思われるようなイラストを
活用するのもよい手段です。
むしろそのほうが理解しやすく、
親御さんの予防意識を促すことになるでしょう。

また親子が一緒に指導を受けることで
自宅に帰っても楽しく歯みがきをしたり
定期的にメンテナンスを受けることができるでしょう。

歯科医院独自に歯みがきノートなどを作り、
ちゃんと歯みがきができた時は
親御さんと一緒にシールを貼るなど、
子どものブラッシング意欲をそそるような
ツールを活用するのもよいですね。

さらに親御さんには、プラスアルファとして
処置済みの歯
(金属素材使用の歯、年代によってはアマルガム処置)
二次カリエスの危険性が高いことを
きちんと認識してもらう必要があります。

二次カリエスの予防とともに、
健康な歯をいつまでも大切にするための予防歯科は
「まず知ってもらうこと」
から始まるのですから。

予防歯科は自費治療です。
医院にもよりますが、保険診療と比較して
費用が少し高くなります。

しかし保険診療であっても
繰り返し虫歯治療を行えば治療費は膨らみ、
さらに通院に時間も取られてしまいます。

治療からFMCまで一連の治療での費用か
治療のための費用か?
そこをどのように伝えるかは、スタッフ次第です。

漠然と
「次またフッ素塗りに来てね」
と伝えても、
親の意識を予防型に変えなければ
子どもは永久歯になってもカリエスを繰り返します。

親が予防意識を持ち
率先して家庭でのセルフケア、
そして歯科医院での予防処置を受けることにより
子どものお手本となってもらう、
この一連の流れを促すことが大事なのです。

さらに、
・こんな話し方したら分かりやすかった
・こんなツール使ったらやる気出してくれた
など、
成功事例やうまくいかなかった事例を
医院内で共有する場を作りましょう。
特にうまくいかなかったことを
素直に言える雰囲気作りも大事だなぁと感じています。

歯科TC Aより