欲しい機器があるけど手が出ないとか、
チェアをもう1つ増やしたのに、
思ったより患者さんが増えない時には、
経費削減をどうしても意識してしまいますよね。
経費削減は経費のスリム化とも言われ、
よくダイエットに例えられます。
ダイエットにも適切なやり方があるように、
経費削減にも正しいアプローチがあります。
誤ったアプローチで逆に激太りしないように、
ぜひ参考にしてください。
エアコンの設定温度を変えて経費節減?
「なんか暑くない…?」
A歯科医院で誰かが言います。
「あれっ?エアコンの温度が28℃になってる!」
設定温度を下げようとしたBさんを
Cさんが止めます。
「それ、院長がしたの。勝手に直すと怒られるよ。」
A歯科医院は最近、予防歯科を強化しようと、
メインテナンス専用ルームを増築したばかりです。
大きなお金を使った後とあって、
院長には節約ムードが漂っています。
朝イチの患者さんが入ってきて、
午前の診療が始まりました。
待合は患者さんがいるからということで、
設定温度は25℃にしているようです。
ところが、何人かの患者さんは
少し寒いと言っています。
午前診療が終わり、エアコンのスイッチを切って、
休憩に入りました。
休憩室のエアコンも、設定温度は28℃なのかな…
とBさんが思っていると、
「院長は休憩室に来ないからいいよね」と
チーフがエアコンをフルパワーで稼働します。
「ねえBさん、替えのユニフォーム持ってない?」
「どうしたの…?あっ…あちゃあ~」
Cさんのユニフォームの両脇部分が汗でぐっしょり。
乾いても汗ジミになってしまいそうです。
女子にとってワキ汗は恥ずべきもの。
「患者さんによく見える部分なのに…恥ずかしいよ~」
午後になると暑さはさらに増し、
ウォーターサーバーの水がどんどん無くなります。
ついに高齢の患者さんに熱中症様の症状が…。
室内温度を測ったら32℃。
それでも、外よりは涼しいのかもしれませんが…。
チーフが「私が院長に説明するから」と、
エアコンの設定温度を下げ、風量を自動にした途端、
涼しい風がものすごい勢いで吹き出しました。
チェアで待機していた患者さんも
どこかホッとしているような…?
さて、
・スタッフや患者さんの満足度が下がっている
・実は電気代削減につながっていない
…というところに傍線を引いてみました。
6時間ほどの間に、クレームが5件入ったという
ことになるでしょうか…
業務用エアコンによる電気代は、
家庭用のものより確かに高いです。
エアコンの設定温度を1℃外気温に近づけるごとに、
電気代が10%減ると聞きます。
ざっくり計算ですが、電気代が月10万の医院だと、
夏に設定温度を1℃上げると1万円カットできる
ということです。
ただ、1万円カットするために、
どれだけの人が不満を抱いたのか…?
払った犠牲と比べて、見返りが少ないように
感じられませんか?
それに、電気代がかかっているのは
エアコンだけではないはずです。
間違ったアプローチの共通点とは?
エアコンの事例の他には、こんな例があります。
・ケース①
紙コップ、洗濯洗剤、フロアシートなどの
日用雑貨品を全て底値で買うように指示され、
ホームセンターやスーパーを何軒もハシゴした。
・ケース②
患者さんへの配布資料以外は裏紙で印刷していたが、
紙詰まりを何度も起こした上に修理が必要になり、
裏紙を使用していたことで保証対象外となり、
修理代が24,000円かかった。
・ケース③
プリンターのインクカートリッジを、
中身だけ補充する「詰め替え式」に変更した。
どの例も、確かに経費自体は削減できています。
また、コストパフォーマンスに優れている、
環境に優しいなどの利点もあります。
一方で、タイムコストや手間はどうでしょうか?
「院長はやれと言うだけ。」
「自分ではやっていないから、どんなに手間がかかるかわからない」
スタッフは実はこう思っているかもしれません。
スタッフに必要以上に手間をかけさせ、
患者さんの満足度も下げてしまう。
場合によって別のコストが発生することもあるので、
結局は削減も成功していないのかもしれません。
よって、このような経費削減は間違っている
と言えます。
本気で経費削減を考えるなら
家庭レベルの小手先の策に走らず、院長らしく、
税理士などの専門家に相談する。
費用を回収できるぐらいのサービスを考える。
などの方が理にかなっています。
節約に走る院長を見て、
「この人について行こう」と思うスタッフはいません。
自分たちが不利益を被るなら、なおさらです。
ぜひ、院長の名にふさわしい決断をしてください。