初診時のカウンセリングで
口腔内についての問診が一通り終われば、
いよいよ今度は歯科に対して抱えている
患者の内面・心理面を聴き出していきます。

むしろここからが
初診カウンセリングの本番であり、
醍醐味ともいえます。

なぜなら、

口腔内の問診はどの歯科医院でも最低限は行っていて、
患者にとっても想定内だからです。

もちろんそれらをどこまで深く聴き出せるか、
ということは担当者の力量に大きく左右されます。

ですが、患者の抱えている内面を確実に聴いている
歯科医院はまだまだ少ないと思います。

ほとんどの歯科医院では、
チェアサイドで簡単に主訴についての質問をした後
「それではお口を診てみますね。」
とすぐにチェアを倒します。

他に何か言いたいことや希望がある患者は口をあけながら、
それらの心配事を抱えながらどのタイミングで言うべきか、
もしくは言わずにいるべきか医師の顔色を伺っています。

患者はそういった経験に慣れています。
そして、歯医者はそういうものだ、と思っています。

ですから初診カウンセリングで口腔内を診る前に
しっかりと話を聴くことができれば、
ユニットに座る時の患者の安心感が違いますし、
他の歯科医院との差別化にもなります。

では、患者が抱えている内面を聴き出す
初診カウンセリングの5つのコツについて
お話します。

その1. 当院に来られたきっかけや理由を聴く

これはどちらかというと患者のためというよりも、
歯科医院のための質問です。

いきなり患者の内面にせまる質問よりも、
これくらいからが順番として訊きやすいと思います。

今や歯科医院はコンビニエンスストアよりも
数が多いと言われています。

それほどたくさんある歯科医院の中から
選んでいただいた理由を把握しておくことは、
マーケティング上非常に有益ですし、
患者が何を期待してこの歯科医院に来られたのかも分かります。

また、患者から信頼されていれば、
紹介がきっかけで来院される患者が比例して増えてくることも
この質問をすれば実感できるでしょう。
これはスタッフのモチベーションアップにもつながります。

その2. 今までの歯科医院に対する思いを引き出す

是非患者に質問してほしいこととして、
これまで通ってきた歯科医院の良かったところ、
悪かったところを尋ねてみてください。

治療歴を伺った後の流れで訊いてみてもいいかもしれません。

実践されたら分かるかと思いますが、
患者はこれまでの歯科医院への不満を
なんと饒舌に語ることでしょう。

それらを落ち着いて聴くだけでも、
患者との信頼関係ができやすくなります。

ただ、多くの不満を口にされる方の場合、
裏を返すとこちらに対して不満を抱くリスクも
大きいということ。
その点には自分たちも注意して対応することが必要です。

もうひとつ気を付けておきたいのは、
患者に「他の歯科医院の悪口を言わされている」という
印象を与えてしまわないようにすることです。

あくまでも「今後の治療の参考にしたいので」
ということを強調し、
他院を否定してしまわないよう、
不満に思ったことだけでなく他院で良かったこと、
今回の通院で同じようにしてほしいことも伺うようにしましょう。

その3. 今回の通院に対する希望を聴き出す

しつこいようですが初めて歯科医院に訪れる患者は
不安なことがいっぱいです。

そして、治療歴が多くいろいろな歯科にかかった経験がある
患者ほど、治療に対してたくさんの要望をもっています。

しかし、それらはなかなか自ら言い出せないもの。
こちらから尋ねてあげることで、多くの患者は安心します。

いきなり言葉通りに「治療に対する希望はありますか?」と
聞いてもピンとこない方が多いので、
「とにかく痛くしないでほしい」
「通院のペースや希望の時間帯」
「いつまでに終わってほしいのか」
など、いくつか例を出してあげると、
患者はより話しやすくなります。

その4. 患者の抱える恐怖心を訊きだす

歯科治療に大きな恐怖心を持っている患者は、
私達が想像しているより多いものです。

そんな患者が自分から「歯医者が怖い」と言い出すには
本人にしか分からない大きなストレスがかかっています。

そこで、初診カウンセリングをする全ての患者に、
こちらから問いかけるようにしましょう。

歯科医院に恐怖心を持っている方は、
「こんなに怖がっているのは自分だけだ」と感じていることが多く、
それを恥ずかしく思っていることも少なくありません。

「実はこうやってお話をしていると、
すごく怖がりだと打ち明けてくださる方も多いのですが」
などと付け加えて、
患者が言い出しやすいようにできればいいと思います。

そしてご存知かとは思いますが怖がりのパターンにもさまざまあります。

  • とにかく痛いというのが嫌という方
  • 痛みは大丈夫だけど恐怖心があるという方
  • 麻酔の注射針が怖いという方
  • それらの組み合わせ…。

どんなタイプかによって対応が違ってきます。

あまり共感しすぎて恐怖心をあおってしまっていけないので、
こちらは落ち着いたトーンで優しく話を伺うようにしましょう。

カウンセリングだけで恐怖心を100%取り去ることはできませんが、
せめてそういった恐怖心を理解しているということが伝わるだけでも、
患者にとっては安心材料になります。

その5. 初診カウンセリングは信頼関係を作る大きなきっかけ

普段歯科診療を行っていると、
「この人は本当はどう思っているのだろう」とか
「なんでこんなことを言うのかな」など、
患者の言動で不思議に思うことが出てくると思います。

患者が抱えている心理面を聴き出すことで、
それまで分からなかった患者の行動の原因になっている
ものがよく分かってきます。

患者との信頼関係は初診カウンセリングだけでなく、
何度か通院をして口腔内が改善されていく段階を経て
少しずつ深まっていくものです。

しかし、初診時のカウンセリングで
「この歯科医院は何でも言ってもいいんだ」という入口を
作ってあげることがその大きな足掛かりになることは
間違いありません。

是非参考にして、実施してみてください。

オーラルヘルスケアチーム 歯科TC Nより