院長という立場は、治療行為だけでなく経営や
スタッフのマネジメントについても
考えなければなりません。

そこで今回は、経営について考える上で
押さえておきたい「指標」や「考え方」
について解説していきます。

経営指標の基本

経営指標とは、
企業の経営状態を表す指標のことです。

「会社の経営状況を客観的に把握するための数値」
と言い換えると分かりやすいでしょう。

単純に毎月の利益がどのくらい出ているかだけでは
経営状態をより深く読み込むことはできません。

また、「今月は忙しかったから利益も良かったな」
「広告を出したから、患者さんが増えたな」
というように感覚で自社の状態を捉えるだけだと、
何の根拠もない施策や思い付きレベルの計画に
経営を委ねているのと同じです。

その点、「経営指標」にしっかりと着目し経営状態
を数字で分析することは、精度の高い施策立案に
役立ちますし、目標も数値化できるので従業員との
共通認識も持ちやすくなります。

経営を効率的に改善するための情報を得ること
にも繋がり、他院と比較した時の自院の強みと弱み
を踏まえたより良い医院作りができるでしょう。

歯科医院経営において考えるべき指標4つ

一言に「経営指標」といっても、
項目は多岐にわたります。

患者さんだけにフォーカスをあてても、
保留率(次回予約を取らずに保留となっている
患者さんの数)・キャンセル率・曜日ごとの集患数
などキリがありません。

もちろん、指標がたくさんあればその分得られる
データも多くなり、より具体的な経営方針の
模索が可能となりますが、
その分膨大な時間と手間がかかります。

そこで、まずは以下4つの項目を指標として
考えてみるのがおすすめです。

実来院数

「1日に何名の患者さんが来院し、それぞれの診療
単価がいくらなのか」その掛け算が日々の売上に
なり、実際に何人の方が来院したのかを
指数としてチェックしておくことは基本です。

予約なしで来た人やキャンセルとなった人なども
考慮して、実際に1日何人の患者さんが
来ているのかをまとめてみましょう。

曜日による来院数のバラつきが見えた場合には、
スタッフのシフト調整にも役立ちます。

自費率

利益を上げるために欠かせないのが、
自費治療の割合を高めることです。

保険適用治療だけでなく、矯正やインプラント
といった自費治療は利益率が高く、安定した
収入を目指す方にとっては魅力的な処置です。

もちろん、唾液検査やホワイトニングも
積極的におすすめしていきたいもの。

まずは、自費率(治療全体から見た自費治療の割合)
を算出してみましょう。

歯科診療所における自費診療(その他の診療収益)の
割合は18%程度だと言われています。

パーセンテージが低い場合には、自費治療を
うまくおすすめできていないことになります。

自費率が低い原因としては、
「治療のメリットを正しく伝えられていない」
「ホームページに書いてある値段が不明瞭」
「クレジットカード決済やデンタルローンがない」
などが考えられます。

来院予定数

来院予定数とは、現在予約が入っている患者さんの
人数のことで、待ち患者数とも言います。

「〇か月後くらいに定期健診を案内している」では
なく、実際にアポイントメントを取って予約枠を
確保している患者さん数をカウントしてください。

来院予定数は、医院の安定度を図る上で
非常に重要な指標です。

いくら新規の患者さんが多くても、いくら累計の
患者さん数が多くても、実際に来院を予定している
人の数が少なければ収入は見込めないからです。

医院の規模や立地によっても異なりますが、
来院予定数が100名を下回る経営は危険信号。

早めに改善の手立てを打つことが求められます。

リコール率

リコール率とは、
定期検診で再来院した患者さんの人数÷リコール数
(定期検診での再来院を促した回数)
で求められます。

定期検診を受けてくれる患者さんが多ければ、
集患や広告といった活動について頭を悩ませる
必要がなく、安定的な収入が見込めるでしょう。

リコール率が50%を下回る場合には、
リコールの方法や来院時の声掛けの方法などを
見直し、数値を上げる対策が必要です。

経営者の立場で考えるべきこと

毎月の利益が出ているかどうかだけで、
経営を判断してはいけません。

安定した収入が得られているように見えて、
急に経営が失速し立て直せなくなるケースも
多くみられます。

経営指標をチェック&分析し、必要に応じた
対策を考えることが医院運営の安定化や
成長に繋がります。