愛煙家にとっては肩身が狭くなってきた、
近年の禁煙トレンド。

タバコの害は様々なメディアで
紹介されています。

それでも「生涯喫煙生活!」と
堂々と宣言する人もいるくらい、
一生の伴侶はタバコという人も
めずらしくありません。

健康に害を及ぼしても、
好きな人は吸い続けるようです。

タバコは歯科治療においても
多大な悪影響を及ぼしますが、
患者さんにどのように伝えると
危機感を持ってもらえるのでしょうか。

医療従事者としての立場を
ちょっと考えてみましょう。

■タバコを吸うことによる悪影響とは

たばこは健康に悪いよと周りに言われるまでもなく、
タバコが体に悪いことは
喫煙者本人がいちばんよく知っています。

体に悪いよと伝えたところで、
「そんなこと言われなくてもわかっている!」と
言い返されるのは、
喫煙者本人もこのことを重々承知しているからです。

喫煙、特にタバコの煙が及ぼす悪害は、
肺ガンをはじめ、高血圧や心筋梗塞、動脈硬化、
脳卒中など命に係わる病気を引き起こすリスクが
非常に高いことは、喫煙者は当然知っています。

しかし、
健康に深刻な影響を与えるタバコの煙が
いちばん最初に通るのは口の中であり、
害の集合体である煙が
口の中で留まる器官であることを
わかっている人は、
実は少ないのではないでしょうか。

タバコが及ぼす口腔内の影響は、
まず歯周病です。

その他、舌ガンなどの口腔ガンを
引き起こすリスクがあります。

しかし、患者さんの意識は必ず
「タバコ=肺ガン、動脈硬化」
といった体の健康の害へ向きます。

言い換えると
「タバコ=口の中の健康を損ねる」
という意識が薄いのです。

患者さんにとって
お口の中とタバコ関連は?と聞くと、
せいぜい「タバコを吸うとヤニがつくから
歯が汚くなる」といった審美面の問題程度でしょう。

つまり歯科疾患とタバコの害という認識が、
未だ浸透していないということになります。

タバコを吸うことで
口腔ガンのリスクが高くなるのも
もちろん怖いですが、
患者さんに最も認識してもらいたいことは、
やはり歯周病との関連性です。

歯周病は知っているけど、
喫煙と関連していることを
知っている人はどれほどいるでしょうか。

喫煙は、歯周組織へ様々な影響を与えます。

喫煙直後の歯肉はニコチンの影響により、
血管が収縮しているため、
血流が悪くなっています。

そのため
ヘモグロビンの量および酸素飽和度が
低下しているため、歯周病の特徴である
歯ぐきの出血が少なくなります。

非喫煙者の場合、
歯周病の代表的な兆候である
歯肉の出血が顕著にみられますが、
喫煙者の場合は歯肉からの出血が
少ないことで、
患者さんが自覚症状の把握を逃すこととなり、
歯科医院の受診のきっかけを
失うことになります。

患者さんに喫煙が与える
口腔内への悪影響について理解し、
予防につとめてもらうためには、
患者さん自身が何らかのきっかけで
歯科医院を受診する時しか
機会がありません。

もし患者さんが歯周病の予防のために
歯石除去を行って欲しいなどの要望があれば、
喫煙と歯周病の関係性などをある程度理解し、
禁煙あるいは減煙に努めるなど、
ご自身で努力しているはずです。

しかし、
喫煙習慣のある患者さんの多くは、
タバコを止めたくても止められないのでしょう。

■患者さんにタバコが与える口腔内への影響を理解してもらうために

歯科医療従事者側としては、
まず患者さんに喫煙が与える
恐ろしい影響について、
しっかりと説明することが必要です。

受診のきっかけが歯周病ではなく、
例えば虫歯や被せ物が取れたなど
であった場合でも、
カウンセリング時にしっかりと
タバコの害を説明するべきです。

やんわりとした言い方ではなく、
ストレートに「歯周病で歯を失くす」
「肺ガンだけでなく、口腔ガンになる
可能性が非常に高くなる」と
きっぱりと伝えることが必要になります。

しかし、気を付けてくださいね。

患者さんにとって、
辛いことを伝えるときには
まずは共感が大事です。

なかなか喫煙をやめられないこと、
止めようと思っても思い通りに
行かないことなど、
患者さんの心に寄り添いながら
禁煙をサポートすると
効き目が高くなります。

■説明時はアイコンタクト

また歯科衛生士の場合、
プロービング時などで
喫煙習慣がわかるでしょう。

スケーリング前にタバコが与える影響を、
目を見てきちんと話します。

スケーリングをしながらでは効果が半減します。

大事なことを伝えるには
アイコンタクトが必須です。

時間に押されるかもしれませんが、
モニターなどを使いながら、
なぜ歯周病になったのに
気が付かなかったのかについて
患者さんの目を見ながら
話す時間を作ってください。

 

■説明資料を作りましょう

 

喫煙により
歯ぐきからの出血が少なかったこと、
そのために自覚症状が現れず、
症状が進行してしまったこと、
そして非喫煙者に比べて
歯周病は治りにくいことを説明しましょう。

喫煙が与えるお口への影響について、
手作りのリーフレットなどを
作成することもお勧めです。

喫煙が与える害だけでなく、
禁煙することでこんなメリットがある
ということも忘れずに記しておきましょう。

マイナスだけでなく
プラスのことを言われると、
人間は頑張れる気持ちになれるものです。

私たちは治療を行うだけでなく、
患者さんに「気づき」を与える立場です。

体の健康はまず口の中からという
自覚を持ってもらうためにも、
歯科従事者がしっかりとタバコの害について
説明できるよう、資料の準備は必要でしょう。

きれいな印刷物である必要はありません。

スタッフ全員で考えて
喫煙患者さんにお渡しする
資料の作成をすすめてみませんか?