割れた窓を放置していると、
他の窓も割られやすくなる…。

これを「割れ窓理論」といいます。

聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。

割れ窓の放置が軽犯罪多発に繋がり、
結果として治安が悪くなるという
環境犯罪学の理論です。

院内で割れた窓を見つけたら、
すぐにふさごうとしますよね?

割れた窓を放置していると
患者さんの印象が悪くなるのは必至だからです。

実は、院内には一見しただけではわかりにくい
「割れ窓」が存在していることがあります。

では、歯科医院にとっての「割れ窓」とは何でしょうか?
事例を読んで「割れ窓」を探してみて下さい。

A歯科医院の「割れ窓」は?

月曜日の朝のA歯科医院。

チーフはBさんに目を留め、
少し驚きました。

ヘアスタイルが変わっています。

ですが、チーフが驚いた理由は、
ヘアスタイルではなく髪の色でした。

髪の色が前よりだいぶ明るくなったように思える…。

髪の色についてはこれといったルールはないと
改めて思い出しつつ、
Bさんの髪の色はやや行き過ぎのように感じ、
チーフは戸惑いました。

院長はどう思うだろう…?
後で相談しようと心に留めました。

Bさんの髪色をきっかけに、
スタッフをそれとなく観察してみました。

すると、カラーコンタクトや、ジェルネイルなど、
小さなオシャレをしているスタッフが
既にしかも複数いることに気づきました。

チーフは少なからずショックを受け、
今まで気が付かなかった自分を情けなく感じました。

オシャレするスタッフの気持ち

A歯科医院の割れ窓が見えたでしょうか?
ここで、質問です。

Bさんをはじめとするオシャレスタッフ達は、
現時点で悪いことをしているという意識を
抱いていると思いますか?

答えはNO。

チーフが懸念している「小さなオシャレ」は、
「誰もここには気づかないだろう」という
スタッフの意識が表われているだけで、
院内の雰囲気を自分たちが悪くしつつあるなどとは、
夢にも思っていません。

例えば、休日に施していたジェルネイルを
付けたまま出勤してしまい、
見つかりはしないかとヒヤヒヤしながら
仕事をしたが見つからなかった…など、
はじまりはほんのささいなことだったはずです。

もしもチーフが、
この時点で「そういうのは良くない」と
チーフ風を吹かせて注意したとすると、
どうなると思いますか?

その場ではわかりました、と言い、
あるいは実際に直すスタッフもいるでしょうが、
心の底では
「訳も分からずチーフの常識を押し付けられた」
と思うスタッフがほとんどでしょう。

ルール化で指導可能に

どうしたらすんなり受け入れてもらえるのか?

スタッフに対してだけでなく、
患者さんに対しても、
このように思うことは非常によくあります。

特に、身だしなみに関しては注意しづらいですよね。

ここで役に立つのが「ルール」や「ポリシー」です。

医院としての基準をあらかじめ定めておくことで、
指導が可能になります。

「ウチの医院で働く人はこうするものですよ」
とあらかじめ伝えておけば、
「ウチはこうだから」と
指導しやすいのではないでしょうか。

また、指導される側にしても、
基準という理由がある方が
受け入れやすくなるはずです。

A歯科医院のように、
今は基準を設けていない医院も多くあります。

その場合は、
ミーティング等で身だしなみのルールについて
話し合うと良いでしょう。

肝要なのは、全員の意見を共有して全員で決めることです。

ひとまずは聞く、聞く姿勢を見せる、
反発心を和らげるためには、
この姿勢が欠かせません。

・身だしなみとオシャレは違うのか、違いは何か
・身だしなみを整えるのは何のためか
・患者さんの信頼を得やすい身だしなみとは

これらについてスタッフから意見を出してもらい、
全員の妥協点を探る、というのが
行いやすいのではないでしょうか。

ルールやポリシーが疑われる理由

ルールやポリシー自体の妥当性を
疑われることもあると思います。

そのような場合、疑っている人が思うのは
・なぜそのようなルールやポリシーがあるのかわからない
・指導者側の利益(管理しやすくなる、立場上仕方ない)になるだけなのでは?
ということでしょう。

例えば、法律は国民が安心・安全に
快適に暮らすために制定されたルールです。

であれば、歯科医院のルールやポリシーは
患者さんが安心・安全で快適な歯科医療を
受けるためのものである
ということなのではないでしょうか?

ましてや、患者さんは「医療機関は大体こんな感じ」
というイメージを持っています。

そして、自分のイメージを担保してくれる医院に
通い続けるものです。

割れた窓はふさぐ、当たり前のことが予防歯科経営のキモ

「割れ窓」は身だしなみ以外にも
潜んでいるかもしれません。

例えば、
・補充されないままのパンフレットスタンド
・色褪せた掲示物
・ホコリをかぶった備品 …などです。

2~3か月ごとに来院し、
定期メインテナンスを受けてくださいねと
患者さんに来院を促している予防歯科がほとんどですが、
来院した時に「以前も感じた違和感」を再び感じたら、
どう思うか?

予防歯科経営は、
こうした小さな「割れ窓」を見つけ、
放置せず確実にふさいでいくことで、
結果が出てくるものだと言えるでしょう。