あなたは診療中、患者さんの知識に「あれ?」と思うことはありませんか?
そう、患者さんはいつも正しい情報を入手できているわけではありません。
そんなとき歯科のプロとしてあなたはどうすべきでしょうか?

いまや、インターネットやテレビ、雑誌などさまざまな媒体があふれています。
多くの情報にさらされていると、時に間違った情報を得ていることもあります。

予防歯科を強化するには、「患者教育」は大きな課題になります。

私もこのごろ、そんなことを思うことが重なったのでお伝えしたいと思います。

虫歯も歯周病も、日常のセルフケアと予防歯科を受診することで予防することが可能です。
そしてプラスアルファの要素を取り入れることで、さらに予防効果は高まります。
特にキシリトールは、ガムなどで手軽に買えるので、口にする機会が多いです。
キシリトールは虫歯予防に効果があります。

患者さんの中にはキシリトールさえ口にしておけば大丈夫!という
「キシリトール信者」ともいえるような方はいませんか?
しかし本当にそうでしょうか?

間違った認識を持つことで、かえって虫歯になる危険性もありますよね。
そんなとき、私たちは歯科医療のプロとして
どんなことができるでしょうか。

そこで今回は歯に関する情報を「正しく」伝えることについてお話します。
とっつきやすく「キシリトール」を例にとって考えてみましょう。

キシリトールに関して間違った知識を持つ患者たち

虫歯予防としてよく名が知れている食べ物として
「キシリトールガム」
がありますよね。
スーパーやコンビニなど、色々な場所で手軽に購入できます。

しかしこのキシリトールに関して曖昧であったり
間違った認識を持っている人が意外と多いのではないでしょうか。
これでは、せっかくキシリトールが持つ
虫歯予防に対する効果も半減してしまいます。

例えば、誤った認識の例として・・・

① キシリトールガムならなんでも良い

キシリトールが含まれていれば
同じ虫歯予防効果が得られるでしょうか?
そうではありませんよね。

ご存知の通りキシリトール含有量によって
虫歯予防効果が高いものとそうでないものがあります。
わたしたち歯科従事者はその知識を有しています。
でも患者さんはそんな細かいことまで知らないことが多いでしょう。
「キシリトールガムならどれでも同じでしょ。」
「好きなメーカーや味で選んでいるわ。」
などといった声が多いのではないかと思います。

一般的にキシリトール含有率50%以上でないとその効果もあまり期待できません。

もちろん患者さんから
「どんなキシリトールガムを選べばいいですか?」
と聞かれたときは、
できれば歯科専売のもの、つまり
キシリトール含有率100%のもの
をお勧めすることがやはり望ましいでしょう。

また、会話の中でキシリトールの話が出たときに
こちらから患者さんにお話してみるのも良いかも知れませんね。

  • なぜ歯科専売のキシリトール含有率100%のものが良いの?
  • ミュータンス菌とキシリトールはどう関わるの?

などをきちんと説明する。

これが歯科医療のプロの仕事であると思います。
この一つひとつが、「予防」に対する正しい知識と実践に繋がります。

② キシリトールガムを噛めば歯磨きをしなくてもよい

また、驚くことに
「キシリトールガムを噛んでいれば歯磨きは不要」
という間違った概念を持っている人も数多くいるようです。

キシリトールの効果は、
口腔内の汚れを綺麗に落としてこそ発揮されるものです。
口腔内に汚れが残っている状態でいくら噛んでも大きな意味を成しません。

口腔内が不衛生な状態でキシリトールガムを噛み続けても、
マージンにプラークが残っている状態では効果が発揮されません。
かえってプラークが増えてしまう危険性もあります。
決してミュータンス菌がゼロになるわけではないのです。
このことを患者さんが間違って理解している場合もあります。

セルフケアの基本は家庭での「歯磨き」です。
キシリトールはあくまでも
「虫歯が作られにくい環境を整えること」
が目的です。

しかしどういった経緯か
「歯磨きをしなくてもキシリトールガムさえ噛んでおけば大丈夫」
と誤解されている風潮があります。

このような間違った認識を取り除き、
キシリトールの役割はあくまで補助的なものである
ということを知ってもらわなければいけません。

最近はネットで様々な情報を手に入れることができます。
そのため根拠が明確なものから曖昧なものまでさまざまな情報が容易に入手できます。
知識のない患者さんがこれらの情報の信憑性を判断する。
それは非常に難しいことです。

そのようなときこそ、私たち歯科医療のプロの出番ではないでしょうか?

少なくとも歯科医療を専門としている立場として、
正しい情報を患者に伝えること。
健康な歯を保つためには何が必要なのかをきちんと把握してもらうこと。
そのためにはわたしたちが自ら説明しなければいけません。
医院から情報発信として冊子や院内新聞などを活用するのも
方法の一つではないでしょうか。

③ キシリトールガムを噛めば虫歯が治る

これに関しては、キシリトールが治すのではありません。
正しくは
「虫歯の原因とならないキシリトールガムをしっかり噛むことで
唾液の分泌を促進し、歯の再石灰化を促す」
ということが正しい見解です。

キシリトールそのものが虫歯を治すわけではありません。

しかし患者さんの中には
「キシリトールガムを噛むから虫歯が治る」
と勘違いする人もいます。

あながち間違いというわけではないように思えますが、
初期虫歯では、唾液が再石灰化を促し、
フッ素塗布することで改善を試みるのであって、
キシリトールが虫歯を治すということは
少しニュアンスが違うのではないでしょうか。

正しい情報を伝えることがわたしたちの仕事

インターネットやスマートフォンなどの普及によって、
今ではすぐにネット検索で情報を得ることができます。

知りたいことをすぐに調べることで
問題解決が可能となった現代において、
わたしたちがすべきことは、
正しい情報を患者に伝えることです。

今回の「キシリトール」を例にとると・・・
虫歯予防において最も大切なことは、日常の歯磨きとメンテナンスです。
キシリトールを加えることで虫歯予防の効果は高まります。
キシリトールは積極的に摂取したいアイテムですが、
これはあくまでプラスアルファの要素です。

極論をいえば、
「キシリトールガムが歯磨きの代わりになる」
などの間違った知識を持っている患者さんがいたら・・・

この原因は、もしかして私たち歯科医療従事者にもあるかもしれません。

繰り返しになりますが、

  • 正しい知識を自らの説明で伝える
  • 情報を伝える冊子や院内新聞を活用して予防を啓発していく

これらも私たちの大切な役目だと思います。

ぜひまずは、今、目の前にいる患者さんから。
正しい知識をひとつひとつ伝えることを意識してもらえたらと思います。

正しい知識を教えてくれる先生やスタッフは患者さんから信頼されます。
そして、医院のファンも少しずつ増えていくと思いますよ!

歯科TC Aより