真面目で、勉強熱心な
歯科衛生士や歯科助手、TC。
あなたの医院にもいませんか?
勤務態度も申し分なく、
頼もしさすら感じさせるような。
でもそのスタッフ、
患者さんからはどう思われているのでしょう?
患者さんの評価の視点は院長とは違っています。
院長は高く評価しているのに
患者ウケはそうでもない、
むしろ悪い…ということは、
実はよくあることです。
原因はどんなところにあるのでしょうか。
洗い物と器具の手入れに勤しむ歯科衛生士
Aさんは新卒でB歯科に就職した歯科衛生士です。
新卒といっても、歯科助手として
2年間勤務した後で衛生士学校に通った、
そういう経歴の持ち主です。
新卒にもかかわらず即戦力になり得ると、
院長は期待も相まって高く評価し採用しました。
勤続2年目のこの春から
メインテナンスを受け持っています。
ただ、最近になって、
Aさんが洗い物や器具の手入れをしているのを
よく見かけるようになりました。
患者さんのドタキャンはままあることですから、
初めは気に留めていませんでした。
しかしここ1週間というもの、
洗い物をしているAさんを見かけない日は
無いぐらいです。
ちなみに他の衛生士は、
洗い物などは他のスタッフに任せて
バタバタと忙しそうです。
院長は予約簿を確認してみました。
予約簿が、ひとつの枠だけ白っぽい
Aさんの枠はところどころ空欄で白く、
1週間先、2週間先と進むにつれて
空欄の割合が増えていっています。
逆に、他の衛生士の枠は
3か月先までビッシリです。
見覚えのある名前を発見しました。
以前からメインテナンスに通う、
院長夫人の友人です。
確か、院長夫人経由で担当を
Aさんに代えてもらうよう
お願いした記憶があります。
しかし今見ると、次の予約は
「以前の担当衛生士の枠」で取られています。
院長はAさんとよく知る夫人の友人とを
思い浮かべ、少し考えました。
友人は、一度はAさんのメインテナンスを
受けているようです。
もしかしたらその時に何かあったのかもしれません。
怖いから担当を戻してほしい?
「怖いから前の衛生士に戻して欲しいって頼まれたのよ」
友人の件について尋ねると、
夫人はこう言いました。
「染出しをしたら、
『鏡を見て下さい。全然磨けていないみたいですよ。
今の磨き方ではダメです!』
って言われたんだって。
ニコリともしないし怖かったって言ってたわ。」
「メンテナンスは続けた方がいいよって言ったら、
じゃあ担当を戻してくれって。」
「怖かった」という友人の言葉と、
一心不乱にシャープニングをする
Aさんの姿がオーバーラップしました。
恐らく直接Aさんに聞いても、
理由ははっきりしないことでしょう。
重要なのは、「何を言ったのか」ではなく、
患者さんがどう感じたのか?
ということなのです。
今は、前の担当衛生士からの引継ぎが完了し、
「2回目」のタイミングです。
他の患者が、友人と同じように感じたのかどうかは
わかりません。
しかし、その可能性は大いにある、
と院長は推察しました。
「勉強熱心、真面目」の落とし穴
真面目で勉強熱心なスタッフは、
医院側にとって実に頼もしい存在です。
ですがその一方で、
患者接遇をなおざりにしがちでもあります。
コレをすればこうなる、
こういう患者はこんな傾向があるから気を付ける…。
真面目で勉強熱心なだけに、
頭がこのようなことでいっぱいになり、
余裕が無くなってしまいがちです。
この余裕の無さは患者さんには「怖い」と映り、
「質問したいけど、怖くてできない」など、
「受け入れてもらえないかも」という不安につながります。
メインテナンスは歯の保険のようなもの
院長夫人の友人は、
・医院関係者に自分の思いを伝えられた・・・。
・Aさんの前の担当衛生士がB歯科の質の担保となった
この2点が幸いしてメインテナンス継続となりました。
しかし、お気づきのように、
このようなケースは珍しいものです。
多くの患者さんは、不快感を抱いても、
「こんな風に感じるのは自分だけかもしれない」
と思い、わざわざ自分から言い出したりはしません。
また、患者さんにとって、
メインテナンスは安心を買う行為です。
いわば、歯に保険をかけているような感覚で
通院しています。
生命保険の営業に悪印象を抱いても、
それでも保険に入りますか?
後から上司が出てきて
「いやいや、あの人は実は勉強熱心で真面目なんですよ」
と言ってきても悪印象は拭えないでしょうし、
ましてや保険に入る理由にはならないはずです。
患者さんも同じだと言えます。
「スタッフとして優秀」は、継続来院の動機にならない
衛生士は歯の保険の営業のようなもの、
と言ったら言い過ぎだと思うでしょうか?
言い過ぎだと思ったとしても、
衛生士の患者応対が
メインテナンス継続のカギを握っている、
このことはお分かりいただけたと思います。
勉強熱心、真面目、技術力、知識量。
これらの資質は確かに医療人として
持つべきものですが、残念ながら
患者さんが継続して来院する動機にはなり得ません。
患者さんを動かすのは信頼関係であり、
信頼関係を築くために接遇マナーがあります。
安定した予防歯科を強化した経営の実現には、
スタッフの接遇マナー向上が
不可欠だと言えるでしょう。
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