歯科保健指導は、
口内を健康でより良い状態に保つために行う
様々な指導の総称で、
予防歯科医院にとってとても大切な活動です。

しかし、もったいない、
惜しい指導を結構見かけます。
たいがい、「歯を磨きましょう!」で
終わってしまっているのです。

今回は、このもったいない、惜しい指導について、
なぜそうなってしまうのかを考えていきます。

もったいない・惜しい要素3つ

1.歯を磨きましょう!で終わっている
2.歯が健康のために果たす役割を話していない
3.歯を磨くこと自体が目的になっている

1.歯を磨きましょう!で終わっている

歯を磨くのが大事、ということは
老若男女問わず誰でも知っています。
このような当たり前のことを呼び掛けるだけだと、
「まあ、そうよね」と反応は薄いです。
ここは専門家として、
もう一歩踏み込んでほしいところです。

「なぜ歯を磨かないといけないんだと
思いますか?」
と一歩踏み込んで質問してから、
理由としてなぜ歯を磨かなければならないのか、
を説明するのです。

そう言われれば…何でだろう?とか、
考えたことなかった、という反応になり、
自分ごととして考えてもらうことができます。

2.歯が健康のために果たす役割を話していない

環境を守ろう!とか森を守ろう!と言われても、
確かにその方がいいだろうとは思うものの、
実際のところはよくわからない…。

「歯は大事です!」は、
このことと似ているのではないでしょうか。
よくわからないので、
自分ごととして捉えるのが難しくなるのです。

「歯が無いとどうなると思いますか?」
などの問いかけを通じて、
歯の役割について想像を通じた理解を得ることで、
なるほど!じゃあ、大事にしないと…という
動機を与えることができます。

「こんなことは皆わかっているだろう」
というようなことであっても、
そうなった時のことを想像してもらえるように
話すといいと思います。

例えば、「歯が無いと食べにくい」は、
知識として知っている人は多いですが、
実際に歯が無い状態がどんな風に食べにくいのか
実感としてわかっている人は少ないものです。

イメージが湧くと印象に残るため、
その後の行動に繋げてもらいやすくなります。

3.歯を磨くことが目的になっている

歯磨きは健康維持の手段のひとつです。
ですが、手段が目的化している指導
見かけることがあります。

「食べたら歯を磨きましょう」
「一回3分は磨いた方がいいです」
などです。

これだと、
「私は歯磨きをしているから、大丈夫。」
「3分磨けば大丈夫なんだな」
と思う人は決して少なくはありません。

歯磨きをすることを伝えるのではなくて、
どんな風に磨くのかを具体的に伝えることが
歯科保健指導の本質
なのではないかと思います。

具体的には、
全部の歯の汚れを取ること大事であり、特に、
「歯と歯の間・歯と歯茎の境目・歯の溝」には
手が届きにくいという事実をきちんと伝えます。

「歯と歯の間は歯ブラシが届きにくいので、
フロスを使った方がいい」
など、どうやって汚れを取るかということを
理解してもらう
ことが重要です。

歯科保健指導の意義

最初にもお話したように、
歯科保健指導は予防歯科医院にとって
大変重要な活動
です。

納得感が引き出せる歯科保健指導は、
定期メンテナンス患者の通う動機に直結
しているからです。
また、あなたの歯科医院の
健康に対する姿勢も問われるからです。

あなたの歯科医院の健康観は、
どんなものですか?
お口のお手入れは、
日常的に自分を大切にする習慣だということを
気づいてもらえるといいですね。