歯科、といえば
「長時間待たされる」
と思ってしまう人は多いですね。

歯科医院とて、長時間待たせることを
決して良しとはしていないのですが、
予約を取っても意味が無い、
と辛らつに批判されたこともあると思います。

今回は、この無為な待ち時間を
少しでも減らすにはどうしたらいいかを
考えていきます。
(診療報酬との兼ね合いは置いておいて、
待ち時間を短縮することだけを考えました。
あらかじめご了承の上お読みくださると幸いです。)

「待ち時間」を生むのは一体何?

予約制を採用している医院の多くは、
患者ひとり○分と決め、
そして「○分=ひと枠」として扱いながら
予約簿を埋めていっていると思います。

そして、ひと枠内での流れは、
このような感じでしょう。

  1. 診療台に着座・問診
  2. 治療開始
  3. 治療終了

ここで注目してほしいのは、
上の1~3の他にも診療のために
欠かせない作業があり、
また、1~3の間に不測の事態が
起こり得るということです。

具体的には、1の前に診療台の清拭や
器材の準備が欠かせないし、
治療中にレントゲン撮影や説明用の資料が
必要になることもある、ということです。

こういった準備や不測の事態に対応する時間を
考慮に入れていなければ、
その時間の分だけ遅れが発生してしまいます。

こう考えると、
待ち時間削減のための課題設定としては、
治療以外にかかる時間をいかに減らすか
というのが適当なのではないでしょうか。

お勧めはカルテの予習

そこで、強くお勧めするのが
「カルテの予習」です。

アシスタントに付くスタッフが、
あらかじめカルテを見ておくことです。

合間を見て翌日分のカルテを出しておき、
診療終了前後の20分ぐらいを使い、
アシスタントスタッフ全員でざっと見ておく。
これだけでもだいぶ違ってくると思います。

具体的に何を予習するのかというと、

  • どんな材料や器具または
    資料(自費の説明用)が必要か
  • あまり使わないような物を使いそうであれば、
    その収納場所を確認しておく。
  • やり方や使い方がわからないなどを、
    他の人に尋ねておく
  • 話が長くなりそうな人の対策を考えておく

などが考えられます。

始めたばかりは時間がかかるかもしれませんが、
1か月もすれば短くなります。
何度も出てくる治療内容の方が多いからです。

あらかじめできることはしておくことで
準備にかかる時間を削減し、
結果的に診療が予約時間通りに回ることに
つながっていくでしょう。

他の対策は?

他にも、

  • 受付として入職しても、
    はじめ何か月かは歯科助手として研修し、
    時間間隔を掴んでもらう
  • 予防専用チェアを設け、
    治療と予防を完全に分ける

なども有効な待ち時間対策となり得るでしょう。

受付が歯科助手として研修?
関係あるの?
と意外に思うかもしれませんが、
目的は、受付に時間間隔を掴んでもらうこと
あります。

将来的に予約管理を担う受付が
時間間隔を掴むことによって、
より効率的な配分ができるように
なると期待します。

例えば、
残存歯4本の患者のメンテナンスの時間が、
残存歯20本の患者と同じ、といった
ミスマッチによるタイムロスを防ぐことが
可能になると思います。

いくら
「メンテナンスは○分、CRはひと枠でいいけど、
自費補綴を勧める時は~」
などと頭でわかっていても、
実際の経験による感覚に勝るものはありません。

実際、経験がないがために、
朝イチから順に、とか
患者に言われるがまま、という
予約の取り方に終始している受付は、
残念ながら多いのが現状です。

メンテナンスなら全顎○分、
残存歯が少ないなら○分ずつ減らしていくとか、
抜髄なら○分、消毒の患者と抜歯の患者は
並列して予約を取っても大丈夫…
といったように、
パズルを埋めていくようなイメージが
掴めるようになればいいですね。

また、
将来的に定期管理型予防歯科を目指すのであれば、
「予防をきちんとしていれば、
長時間待たなくて済むようになりますよ」
というメリットを謳っていくのも一手です。

患者さんの教育も必要

医院側の努力と同時に、
患者さんを教育していくことも非常に大切です。

例えば、予約時間を15分過ぎて来た患者さんを
そのまま通し、予定通りに治療をすると、
その後の予定が15分ズレてしまいます。

「(予約時間に)5分以上遅刻しそうであれば、
電話下さい」とか、
「予約時間から10分経過した時点で
キャンセルと見なします」
「あと2回無断キャンセルすると
ご予約いただけなくなります」
など、そんなこと言っても大丈夫なの?と、
聞いている方が心配になるような言葉がけを
している医院も実際にあります。

時間に厳しいからという理由で転院につながった、
などというのはごく少数で、
いわゆる「モンスター」が
転院「していってくれた」に過ぎません。

何のための予約なのか

何のための予約制か、といえば、
等しく万人に平等な時間を無駄にしないためです。
予約までして治療やメンテナンスを受けてくれる
患者さんをまず大切にする。
この心構えが患者さんに真摯に向き合う時間を
増やすのではないかと思います。

とは言っても・・・

これまで、待ち時間が発生する原因から見た
対策法をお話ししてきましたが、とはいっても、
今日から待ち時間が発生するかもしれません。

そんな時は、まず患者さんにお話ししてください。

  1. 予約時間通りに来ていただいた
    感謝の気持ち
  2. 診療がおしていて
    待ってもらうことになることに対する謝罪
  3. 具体的な目安の時間
  4. 時間が遅くなることによる
    患者さんのご都合は?

以上のことを患者さんにお話ししてみましょう。
ほとんどはクレームにはなりません。

どちらかというと
ポジティブにとらえてもらえるでしょう。