
あなたは患者さんが日々どんなものをどんな時に食べているか知っていますか?
むし歯が食べ物と関係することはみんな知っています。
ではそれを患者さん自身の生活に密着した内容でアドバイスしたら・・・?
「食生活アンケート」メリットを4つご紹介します!
あなたの歯科医院では患者さんに
「食生活アンケート」をとっていますか?
食生活アンケートとは読んで字のごとく
患者さんの食生活を記録したもの。
1日に食べたものや飲んだもの、
そしてその時間を最低3日間書き出します。
目的は虫歯の原因の一つである
患者さんの食生活(飲食回数)
の実態を把握すること。
実態が分かれば、
- 飲食と虫歯の関係について、正しい知識を提供する
- 食生活の見直しをして虫歯のリスクを下げる
などの対応が可能になります。
もしかすると既に問診票などで
飲食回数や糖分の摂取量などを聞いている
歯科医院もあるかもしれません。
ところがそのアンケートの答えに問題なさそうな患者さんでも、
蓋をあけてみると隠れていた虫歯のリスクが
出てくることも少なくありません。
実際に多くの患者の食生活アンケートをみてきた
私の経験からアンケートの効果やメリットを
ご紹介しましょう。
メリット1:簡単に虫歯の原因の一端を把握できる
虫歯予防にはやはり唾液検査が重要です。
唾液検査で、
- ミュータンス菌やラクトバチラス菌の量
- 唾液量や唾液の緩衝能
を調査します。
さらに、食生活の全てを把握できるのがベストです。
しかし唾液検査は保険適用外であり、
検査にしり込みする患者さんもいるでしょう。
また、「唾液検査」を導入できていない
歯科医院もあるかもしれません。
一方、「食生活アンケート」は
患者の食べたもの、飲んだものを書き出すだけ。
紙一枚で簡単に始めることができます。
簡単な手順にも関わらず、
記録を取らなければ分からなかった
患者さんの虫歯の原因を表面化できる可能性があるツールです。
虫歯のリスクが高いと思われる患者さんの
食生活に問題がなかった場合は、
それ以外(虫歯原因菌や唾液量・緩衝能)に
原因を絞ることができますね。
メリット2:患者自身が自分の食生活を自覚できる
食生活アンケートでは、
患者さんに3日間口にしたものを
全て記録してもらいます。
たとえ水でもガムでも、口に入れたものは全てです。
実際にこのアンケートを始めてみると、
患者さんは自分が自覚しているよりも
いろいろ食べているし、飲んでいることが多い!
ということがお分かりいただけると思います。
「食事は1日3食で間食はしません!」と宣言した人が、
砂糖入りのコーヒーを何杯も飲んでいたりするのです。
そう、患者さんはふつう
「間食=文字通りのおやつ」と考えていて、
ちょっとしたコーヒーやジュース、ガムなどは
間食のうちに入らないと思っています。
これは患者さん自身に記録をとってもらって
初めて発覚します。
単純に
「1日の飲食回数は何回ですか?間食はしますか?」と
聞いただけでは分からない食生活の実態。
記録をとる過程で
「あれ?私って意外といろいろ食べてたかも…」
とご自身に自覚してもらうことが大切です。
メリット3:患者教育のツールとして活用できる
アンケートをとったら、
その結果をフィードバックすることも重要です。
まずは食生活が虫歯にどう影響しているのか、
正しい知識を提供しましょう。
患者さんは
「甘いものを食べたら虫歯になりやすくなる」という
何となくの知識しか持っていないこともよくあります。
ですが実際はどうでしょうか?
たとえば同じ「板チョコレート」。
おやつの時間に一気に3枚食べてしまうのと、
テレビを見ながら1枚を1、2時間かけてゆっくり食べるのとでは、
より虫歯のリスクが高いのはどちらでしょう?
このように患者さんの興味を引きつけながら、
- 甘いものに限らず食事をすると口腔内が酸性になること
- 唾液に酸性になった口腔内を元に戻す緩衝能と呼ばれる力があること
などを説明し、
食生活と虫歯リスクがどのように関係しているかを伝えます。
ご自身の食生活を記録し続けた患者さんは、
記録をとる前よりも食事に対する関心が高まっています。
患者教育の絶好のチャンスです!
メリット4:正しい知識は虫歯予防のモチベーションにつながる
虫歯と食生活の関係を患者さんに話したら、
今度は一緒にアンケートの結果を振り返ってみてください。
ポイントは飲食回数です。
お茶や水など「口腔内が酸性にならないもの」は
飲食回数としてカウントしません。
逆に「口腔内が酸性になるもの」は
ジュース一口でも山盛りバイキングでも
同じ1回とみなします。
実際の私の経験では、
学校給食の調理師さんで1日に何度も味見をして
飲食回数のカウントが不能になった人や、
家から水筒に入れて持ってきた砂糖入りのコーヒーを
仕事中にちょこちょこと飲んでいて、
その回数が自分でも分からないという人がいました。
1日の理想の飲食回数は3~5回。
大事なのは患者さんのライフスタイルに即して
無理なく続けられる対策を
一緒に考えて実践してもらうことです。
例えば前出の調理師さんには、
味見の回数を減らすことそのものは難しいため、
できる限り味見の後は口の中をゆすいで
口腔内が酸性になる時間を短くする対策を提案しました。
水筒でコーヒーを持参していた患者には、
コーヒーを飲むのは時間を決めた時だけにして
それ以外はお茶にするという対策を立てました。
だらだらと長時間食べ続けたり、
こまめに何度も口に入れたりすることさえ注意すれば、
おやつを食べてはいけない訳でも、
ジュースを飲んではいけない訳でもありません。
これは「甘いもの禁止!」と言われるよりも
ずっと食生活の改善に対する患者さんのハードルを下げ、
モチベーションを上げてくれます。
だってほら、考えてみてください。
私も含め歯科医師や歯科衛生士だって
甘いもの大好きな人、たくさんいますよね。
知識があれば我慢せずに虫歯予防ができる。
食生活アンケートを使って
正しい虫歯予防の知識を患者さんに
広めていきましょう!
それまで知らなかった患者さんの一面を
見ることもできて楽しいですよ。
オーラルヘルスケアチーム 歯科TC Nより
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