研修が終わり、これから現場で
活躍を期待したスタッフが辞めていく。
やっと戦力になると思ったスタッフも・・・
歯科医院でありがちなこのループ。
これを脱出する方法を一つお話しします。

今や日本全体で「人手不足」が叫ばれています。
歯科業界の人手不足はもっとずっと前から深刻です。

予防歯科の意識を患者さんに浸透させる。
メンテナンス中心の診療体制に持ち込む。
これにはスタッフの専門的な知識、
予防という概念に対する理解、これが必要です。

そのため、戦力と期待したスタッフの退職。
・・・これは、
予防歯科に取り組む または これから取り組もうとする
医院にとっては非常事態。
求人は困難を極めるケースが多いのではないでしょうか。

しかし、入職してやっと一人前になった!
とも思えば退職され・・・
また、新たに採用活動。

今までこの無限ループを繰り返している
歯科医院は実は多いものです。

この無限ループから抜け出すために、
外部コンサルタントを導入したり、
大層なマニュアルを作成したり、
そんな対策もいいでしょう。

しかし、大部分の歯科医院はそこまで取り組めません。
そこで、明日からできる対処法をお話ししたいと思います。
自分自身が変わる必要ももちろんありません。
必要なのは採用に対する考え方の枠を少し広げること、これだけです。

「採用の落とし穴」とは・・・

歯科医院の求人はまさに「急募」。
失った労働力を「急いで」補てんする必要がある。
そんなときに行われることがほとんどです。
そのため、一般的な就職活動の時期とはズレてしまうことも。

さらに、そんな時の求人は「鬼気」迫るものになりがちです。
求人広告を見た人が抱く感情は
「なんか怖い」
「こんな歯科医院に行ったら大変な目に遭いそう」
と思われがちです。

そんな感情を乗り越えて面接に来た人は
「ここだったら雇ってくれるだろう」
という気持ちがあるのは否めません。

でもそんな気持ちで面接にくるスタッフの考えは。
「医院理念の理解」からは程遠いものですよね。

そして、いつしか採用時に抱いた院長への感謝は忘れ・・・
「思っていたのと違った」
という決まり文句とともに医院を去る。

院長は
「こんなことが続くなら。
医院を閉めてどこかに雇われる方がよほど気楽だ。」と
肩を落とす。
そんなシーンが多いのではないでしょうか。

ではこうならないために
どうすればよいのでしょうか・・・

歯科医院に限らず採用面接で多いのは、
「院長とのの対面型」
だと思います。

そこは
「労働力の提供者」「労働に対して対価を支払う者」
で契約を締結するかどうかを話し合う場です。
お給料を払うのは経営者である院長です。
採用が労働力の補てんのみを目的とするのであれば
この面接で全く問題ないように思います。

しかしいざ働き始めるとどうでしょう?
スタッフと院長とのかかわりはそれほどない・・・
一方で、一緒に過ごす時間が多いのは
すでに働いているスタッフではないですか?
実はここに「採用の落とし穴」があります。

芋づる式に辞めていくスタッフ

A医院は開業20年超の地域密着型歯科医院。
院長は、昨今の情勢から
予防歯科の取組を本格的に開始しようとしました。
その矢先、勤務歴10年以上のベテラン衛生士Bさんが
結婚退職することになりました。
これから、という時に大打撃ですが、仕方ありません。

A院長はすぐに求人を開始しました。
Bさんの退職は半年後の3月末です。

「半年もあれば見つかるだろう」
と、A院長は気を遣ってくれたBさんに感謝しました。

それなのに・・・
面接希望者すら現れずBさんの退職日は
刻々と近づいてきます。

A院長は考え付く限りの方策を打ちます。
そしてやっとのことで面接希望者Cさんが現れました。
「やっと来てくれた!」
と、院長はもちろん採用

Bさんも胸をなでおろします。
Bさんの結婚と新スタッフの歓迎会を兼ねた会は
とても盛り上がったそうです。

しかし、Cさんの新人研修期間が終了するころ、
衛生士のDさんが「辞めたい」と言ってきました。
ほどなくしてDさんと仲がよい歯科助手Eさんまでもが「辞めたい」と。

そんな院内ではこんな雰囲気が漂いだします。
「Eさん、辞めちゃったね。」
「Dさんと仲良かったから・・・ 仕方ないよね。」
「Cさんとうまくいってなかったしね。」
「明日面接入ってるよね。どんな人かな・・・
 でも今人が足りないし、院長、採用するだろうね。」
「いい人だといいけど・・・
 私たちも一緒に働く人なんだし。」

このまま無限ループに落ち込んでしまいそうな雰囲気です。

院長が「思いやり」と思っていたのは

A院長はBさんの退職により失われた労働力を
一生懸命に補てんしようと努力しました。

Bさんの退職により他のスタッフの負担が増えるのはやむを得ない・・・
でもなるべく長期化しないように、と採用を急いだのです。
それは、スタッフを思いやってのことだったに違いありません。

面接を1人で行ったのだって。
スタッフに無用な手間をかけさせたくなかったから。
・・・であるのにもかかわらず、
スタッフは
「私たちも一緒に働く人なのにな・・・」
不満の気持ちを抱いてしまう。
これって、非常に悲しいことですよね。

A院長は、何も間違ったことはしていません。
強いて言えば、
新しいスタッフは、
「労働力の提供者というだけではなく新しい仲間でもある」
ということを念頭に採用活動を行うべきでした。

そうすれば、例えば、

  • チーフスタッフや同職種である衛生士スタッフに面接に入ってもらう
  • 採用候補者の面接前後の様子を受付スタッフに報告してもらう

などができたかもしれません。

実は先ほどのCさん
面接終了後、玄関を出るとすぐに
タバコに火をつけて歩きタバコで帰っていったとか・・・
それを偶然目にしていたDさんは、
Cさんの採用を聞き、あまりいい気はしなかったそうです。

採用活動は、「一緒に働く仲間」を見つける行為です。

Cさんのような例を後から知って後悔しないために。
可能な範囲でスタッフの協力を仰いでみてはいかがでしょうか。

予防歯科を一緒に盛り上げてくれる、
素敵な仲間がどんどん増えるかも知れませんよ。

ヘルスケアチーム コーディネーターmyより