平成28年度の歯科診療報酬の改定により、
「かかりつけ歯科医」の考えが発表されました。

予防歯科を普及するには、
地域住民の方々が
健康を維持する為に通う
かかりつけの歯科医院を
持つことが必要不可欠です。

今回は国の今後の方向性を示す、
「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所」
ついてご紹介します。

ある講演会で聞いた話では
この認定を受ける歯科診療所は、
約6万8千件ある歯科診療所のうち
約10%と考えられています。

ですので、国の方向性を知った上で、
医院のこれからの取り組みに
少しでも活かしていただけたらと
考えています。

歯科保健医療の現状

歯科医療を取り巻く現状は、
昔と今では大きく異なってきています。

学校保健統計調査によりますと、
一人平均う蝕歯数は、
3歳児では平成1年の2.90本から
0.63本(平成25年)と年々減少しています。
12歳児では平成1年の4.30本から
1.05本(平成25年)とこちらも年々減少しています。

また、歯科疾患実態調査から
歯周病罹患率(4mm以上の歯周ポケットを有する者)の割合は、
平成11年と平成23年の歯周病罹患率を比較すると、
64歳までは減少傾向にありますが、
65歳以上の高齢者では増加傾向にあり、
特に75歳以上で顕著に増加しています。

こうした現状から、
歯科医療サービスの体制は
う蝕治療などの「歯の形態回復」を
主体とした医療機関完結型の歯科医療から、
歯の形態回復に加え、「口腔機能の
維持・回復」の視点も含めた
地域包括ケア(地域完結型医療)における
歯科医療へと変化していくと考えられています。

う蝕や歯周病、口腔機能低下を予防し、
健康寿命を延ばすための取組みが
国をあげて始まっていることを
実感しています。

かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所とは

かかりつけ歯科医がいる事の効果は文献レベルで
報告されています。

例えば、
歯科診療所に通院している2~18歳を対象とした調査において、
フォローアップ回数が10回 を超えると1回と比較して、
有意に新しいう蝕 ができにくくなっていた。

65歳以上の高齢者を対象とした調査において、
3年以上同じ 「かかりつけ歯科医」がいない者は
現在歯数20本未満となる リスクが高くなっていた。

こうした現状を踏まえ、平成28年度の診療報酬改定で
一定の施設基準を満たした施設において、
「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所」を認定し、
歯科疾患の重症化予防への取組みに点数を
加算できるようになりました。

かかりつけ歯科医機能の評価

  • う蝕の重症化予防の評価
    (新) エナメル質初期う蝕管理加算 260点 ※歯科疾患管理料の加算
  • 歯周病の重症化予防の評価
    (新) 歯周病安定期治療(Ⅱ)
    1歯以上10歯未満 380点
    11歯以上20歯未満 550点
    20歯以上 830点
    ※現行の歯周病安定期治療を、歯周病安定期治療(Ⅰ)として、
    歯周病安定期治療(Ⅱ)を新たに創設
  • 口腔機能低下の重症化予防の評価
    (新) 在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料の加算 100点
    【包括範囲】摂食機能療法、歯周病検査、歯周病部分的再評価検査、
    歯周基本治療、歯周基本治療処置、機械的歯面清掃処置

※詳細につきましては参考資料をご参照ください。

かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所の施設基準

しかし、かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所の認定を
受けるには以下の基準を満たすことが必要となっています。

  1. 過去1年間に歯科訪問診療1又は2、歯周病安定期治療及び
    クラウン・ブリッジ維持管理料を算定している実績があること
  2.  ①偶発症に対する緊急性の対応、医療事故及び感染症対策等の
    医療安全対策に係る研修、
    ②高齢者の心身の特性、口腔機能の管理及び緊急時対応等に
    係る研修を修了した常勤の歯科医師が1名以上配置されていること
  3. 歯科医師が複数名配置されていること又は
    歯科医師及び歯科衛生士がそれぞれ一名以上配置されていること
  4. 診療における偶発症等緊急時に円滑な対応ができるよう、
    別の保険医療機関との事前の連携体制が確保されていること
  5. 当該診療所において、
    迅速に歯科訪問診療が可能な歯科医師をあらかじめ指定するとともに、
    当該担当医名、連絡先電話番号等について、事前に患者等に対して
    説明の上、文書により提供していること
  6. 当該地域において、在宅医療を担う保険医療機関と連携を図り、
    必要に応じて、情報提供できる体制を確保していること
  7. 当該地域において、他の保健医療サービス及び福祉サービスの
    連携調整を担当する者と連携していること
  8. 口腔内で使用する歯科医療機器等について、患者ごとの交換や、
    専用の機器を用いた洗浄・滅菌処理を徹底する等十分な感染症対策を
    講じていること
  9. 感染症患者に対する歯科診療について、
    ユニットの確保等を含めた診療体制を常時確保していること
  10. 歯科用吸引装置等により、歯科ユニット毎に歯の切削時等に飛散する
    細かな物質を吸引できる環境を確保していること
  11. 患者にとって安心で安全な歯科医療環境の提供を行うにつき
    次の十分な装置・器具等を有していること。
    ①自動体外式除細動器(AED)、
    ②経皮的酸素飽和度測定器(パルスオキシメーター)、
    ③酸素供給装置、
    ④血圧計、
    ⑤救急蘇生セット、
    ⑥歯科用吸引器

かかりつけ歯科医を普及するために必要なこと

私もこの仕事を始める前までは
歯科は痛くなってから通うところという
認識でした。

しかし、今では定期的にかかりつけの歯科医院へ通い、
メンテナンスをお願いしています。

それによって、口腔内環境のことに興味を持ち、
調べれば調べるほど口腔内環境を良く保つことの
重要性を実感するようになりました。

やはり何よりも国民一人ひとりの
歯科に対するリテラシーを
どうやって上げていくかを
考えていくことが重要です。

かかりつけ歯科医の制度も
その一つにあると思います。

かかりつけ歯科医を持つことによって、
歯科医院は歯科疾患に関して継続的な口腔管理が
可能となります。

患者さんは歯科にまつわるリテラシーが上がり、
プロケア及びセルフケアに対する取組みが
変わってくるのだと思います。

それが結果として、全身の健康につながり、
健康寿命の延伸に寄与するのですね。

 

あなたの患者さんが一人でも多く
あなたを「かかりつけ歯科医」だと思って
もらうために・・・

「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所」
をあなたの医院のこれからの取り組みに
活用してみませんか?

参考資料:
平成28年度診療報酬改定の概要 (歯科診療報酬)
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000115718.pdf