患者さんとのコミュニケーションは大切、
と頭ではわかっていても、
元々話すのが得意ではない人にとっては、
頭が痛い課題でしょう。

それに、患者さんの中にも、
無口な人や反応があまり無い人はいますよね。

だとすると、もっと広い意味で、
コミュニケーションを考えた方が良さそうです。

患者コミュニケーションの目的は?

歯科医院での患者コミュニケーションの目的は
何でしょうか?

歯科は、他の科に比べて、
患者との会話が生まれやすい医療機関です。

そのためか
「コミュニケーション イコール 会話」と捉えて
患者さんと仲良くなればいいと考える傾向があります。

これは間違いではないのですが、
仲良くなるとは、個人レベルの交流に過ぎません。

個人レベルでなく患者全体とコミュニケーションを取る
つもりで行うことが
医療機関としての患者コミュニケーション
ではないでしょうか?

例えば、入院時の病室。
ベッド毎にナースコールがついていますよね。
目的は、患者さんの不安を軽くすること。
何かあったら鳴らせば看護師が来てくれると思うと
安心できます。

歯科にはナースコールはありません。
しかし、歯科医院を訪れる患者さんが、
多かれ少なかれ不安を抱いているのは
入院患者と同じことです。
こういう不安を軽くするために、
コミュニケーションを取ります

患者コミュニケーションの目的は、
不安を軽くして、来院の心理的負担を下げることです。

患者コミュニケーションの第一歩は?

患者さんの不安を軽くすることを目的に置くと、
自然と患者さんにスポットを当てることになります。

「私があの患者さんだったら、
どう思うだろうか?」
「私が患者さんだったら、
どんなことが気になるだろうか?」

こんな風に想像することが第一歩です。

歯科特有の不安要素とは

想像する時に押さえておきたいポイントがあります。
患者さんが感じる歯科特有の不安要素です。

・音

「あのキーンって音が嫌で…」に代表されるように、
雑音異音を嫌う患者さんは非常に多いです。
また、スタッフ同士の私語は、
一人でチェアに座っている患者さんには
「私のことを言っているのかも」と不安を呼び、
疎外感を感じさせたりもします。

・マスク

口元が見えないと、表情が見えず、不安を呼びます。
患者さんと話す時には外すのが基本です。

・プライバシー

医科なら1つの診察室には1人の患者ですが、
歯科では治療効率上、水場や薬剤置き場とチェアが
行き来がしやすいように配備されていて、
完全に個室にしにくい、という課題があります。
カウンセリングだけは個室で行う、
または間仕切りを活用する、など、
プライバシーへの配慮を示すといいでしょう。

・説明の有無

目をつぶって処置を受ける患者さんは、
何をされているのかわかりません。
開けていても、何のための薬剤、機械かわからず、
不安です。

「これから水をかけます」
「ちょっとチクッとします」
「風が出ますよ」
など、これから何をするかを説明すると、
予測ができるので不安を軽くできます

想像を見える化する接遇マナー

患者さんにスポットを当てて考えると、
色んなアイデアが出てくると思います。

想像を見える化する際のテクニックが接遇マナーです。
具体的には次のようなものがあります。

・目を見て話す、聞く
(笑顔で)
・話しかける声は普段より高めに
(口角を上げると高くなる)
・目線を同一にする
(処置時以外はなるべく見下ろさない)
・相づちをうつ
(目が合っていれば頷くだけでもよい)
・話すスピードを合わせる
・オウム返しをする
(例:「ここが痛いんです」「右奥が痛いんですね?」)
・開放的な姿勢を取る
(腕組、握りこぶしなどをしない)

接遇マナーに沿うと、患者さんを尊重している
という思いを具体的に示せます

具体的に行動することが大切

ある日の診療中、印象材を練りに
アシスタントが席を外しているチェアに、
患者さんが取り残されていました。
チェアは水平位です。

あるスタッフが、
「あのう…すみません…起こしておきましょうか?」
と声を掛けると、患者さんはとても感謝していました。
そのスタッフは、水平位だと足音がうるさいだろうな、
と想像したんだそうです。

実は、その患者さんが気にしていたのは音でなく、
「仰向けで放置の体」だったそうです。

スタッフの想像は外れていました。
けれど、患者さんの身になって想像しなければ、
チェアを起こすことを思いつかなかったでしょう。

もし、チェアを起こさなくてもいい、
と思っている患者さんでも、
声をかけてくれたこと自体に対して
気遣いを感じるはずです。

適切な患者コミュニケーションで信頼関係を築く

誰でも、自分のことを一生懸命に考えてくれる人を
信頼するものです。

歯医者は苦手だったんだけど、ここなら通える。
そう思ってもらえるような患者コミュニケーションが
取れるといいですね。