「カスタマーサクセス」は、近年IT業界で
広がっている新しい経営概念です。

顧客が得られる価値をゴールとする軸で
ビジネスを展開する考え方です。

商品やサービスを売って顧客満足度を高める
従来の価値提供の先のニーズを狙っています。

SaaS企業が見ているのは契約の先の成果

カスタマーサクセスの概念は、
インターネット経由でソフトウェアを提供する
SaaS(Software as a Service)企業で
重視されています。

クラウド型の会計ソフトや顧客管理システムを
提供するSaaS企業では、契約獲得は
スタートに過ぎません。

SaaSの評価では、システムを導入して
実際に業務がどう変わったかが重要です。

SaaS企業のカスタマーサクセス担当者は、
機能の説明ではなく、成果を強調します。

例えば「営業会議の準備時間が大幅に減ります」
「月末の締め作業が半日から1時間に
短縮されます」といった具合です。

システムの機能によって顧客の行動が
変わらなければ価値がない、
というのが大前提だからです。

フィットネスクラブが売っているのはマシンではない

もう一つ、フィットネス業界を
例に挙げてみましょう。

以前、ジム選びでは設備の充実度に加え、
利用者が継続しやすいかどうかも
重視されるようになっています。

高性能のマシンが揃っていても利用者が通いたく
なるジムでなければすぐに解約されてしまいます。

最近のジムは「最新のマシンを完備」から
「階段を上がっても息が上がらない身体へ」
と顧客の未来像を売りにする形になりました。

顧客が求めているのは、
変化した自分の姿だからです。

歯科医院が提供しているものは何か

この構造は、歯科医療にも
そのまま当てはまります。

例えば、舌圧測定や咀嚼能力検査をしても
「舌圧あるいは咀嚼能力の数値」を見ただけでは
患者さんの行動は変わりにくいでしょう。

しかし、表現を変えると
患者さんは腹落ちしやすくなります。

「最近、むせるようになってきた方」
「食事中に違和感がある方」
に効果があると言われたら響きます。

同じ医療行為でも、伝え方によって
「自分ごと化」の度合いは大きく変わるのです。

患者さんが本当に望むのは治療ではなく「幸せな日常」

高齢の患者さんにとって大事なのは、
歯そのものだけではありません。

例えば、孫と昔通っていた老舗のレストランに
行き、「よく君のお父さんと来ていたんだよ」と
話しながら、好物のステーキを食べたいのです。

あるいは、義歯を気にせず、旧友と自然に
会話できれば同窓会が楽しみになります。

患者さんが歯科医院に求めているのは、
細かい義歯の調整や最先端の手術といった
医療行為の先にあります。

患者さんの背景を想像すると、
歯科医院に求められている役割が
より高い解像度で見えてくるでしょう。

「治療の成功」から「生活の向上」へ

歯科に限らず、医療は何を治したかで
評価されてきました。

また、最近は治療時間におけるサービスの質を
向上する取り組みも注目されるようになりました。

しかし、カスタマーサクセスの視点に立つと
評価軸は少し変わります。

治療の成功から患者さんの生活が
どう変わったかに視野が広がるのです。

好物を食べられているか、
大切な人との食事を楽しめているか。

患者さんが求めている生活に目を向けると、
歯科医院は変わるでしょう、

歯科医院に必要な視点の転換

カスタマーサクセスの本質はシンプルです。

機能ではなく成果で語る。
商品ではなく、顧客の変化で評価する。

歯科医院に置き換えると、
う蝕の治療やスケーリングといった医療行為から
患者さんが生活を取り戻すかに焦点を当てる
患者さん中心の視点です。

技術や設備の難しい話は医療従事者と同じようには
患者さんに届きません。

しかし「この先も家族と同じ食卓を囲める」
という明るい日常生活への希望は、患者さんが受診
や継続的なケアの意義を考えるきっかけになります

まとめ

カスタマーサクセスの概念はこれまでの歯科医院の
本質を変えるわけではありません。

すでに行っている歯科治療の見せ方を変え、
患者さんの真のニーズに光を当てる方法論です。

これまで行ってきた治療を再評価し、患者さんへの
伝え方に生かしていただければ幸いです。

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