あなたは歯科栄養学という言葉を
ご存知でしょうか。

私は今回の調査を始めるまで
歯科栄養学という言葉を聞いたことが
ありませんでした。

しかし、歯を守り、口内環境を整える、
ひいては全身の健康を口腔から考える上で、
毎日摂取する栄養のことを知ることは
非常に重要なことだと感じています。

とは言え、専門の先生にアドバイスをもらう
機会ってそうはないですよね。

多くの方は何かしらの病気や検診などで
病院に行った際に、話を聞く機会が
あるだけではないでしょうか。

そこで、あなたの出番です!!
予防の為に通う歯科医院で
先生から栄養に関するアドバイスをもらえたら
定期的に知識を吸収できて、
日常の意識づけに役立つのではないでしょうか。

歯周病の予防の為に知っておくべき食事と栄養の役割

2005年に世界保健機関(WHO)の紀要で
口腔がんや口腔の慢性炎症などの
口腔疾患を予防し、う蝕や歯周病から
歯を守る栄養学についての総説が
発表されています。
Bull World Health Organ. 2005;83(9):694-9.
The role of diet and nutrition in the etiology and
prevention of oral diseases.
Moynihan PJ

そこでは、以下のような事が述べられています。

  • 栄養不良の状態にあると、歯周病はより急速に悪化する
  • 抗酸化物質(ビタミンC, β-カロチンとビタミンE)は、
    歯周病の予防因子である。

前者における栄養の役割は、
適切な免疫反応を維持することにあります。

つまり、栄養不良になってタンパク質低栄養状態に陥ると、
唾液や免疫系が機能低下します。
すると、生体と細菌のバランスが維持できなくなって、
歯周病菌が増殖する環境となり、歯周病が悪化する
要因になると考えられています。

一方、後者における栄養の役割は、
酸化ストレスや活性酸素種の軽減にあります。

酸化ストレスは歯周組織の破壊を引き起こし、
歯周病を悪化させる要因となります。

この酸化ストレスに耐える為に
抗酸化物質が必要です。

抗酸化物質は大きく分けると、

  • 生体内抗酸化酵素
  • ビタミン・ミネラル
  • ポリフェノール

 の3つに主に分類されます。

特に、ビタミンCやβ-カロチン、ビタミンEなどの
ビタミン類は体内合成が出来ないために
毎日の食事による補給が必要です。

患者さんが抗酸化物質の役割を正しく理解し、
毎日の食事に上手く取り入れられるよう
アドバイスをしてみてはいかがでしょうか。

むし歯の予防の為に知っておくべき食事と栄養の役割

一方、う蝕については以下のような事が述べられています。

  • 砂糖は齲蝕症(虫歯)の最大の危険因子である。
  • フッ化物(フッ素)は、虫歯を減少させる予防因子である。
  • チーズと牛乳(カルシウム、リンとカゼイン)は、虫歯の予防因子である。
  • 全粒穀物、ピーナッツ、硬いチーズとチューインガム(砂糖なし)は、
    虫歯の予防因子である。

砂糖(ショ糖)が虫歯の危険因子であることは
周知の事実かと思います。

2004年にWHOは生活習慣病の予防の観点から
糖類単独摂取のエネルギー量を総エネルギー摂取の
5%以下とすることを推奨されています。

白米ご飯1膳(150g)に含まれる糖質は約55gだそうです。
糖質1gは4kcal相当のエネルギーに変わるので、
白米ご飯1膳の糖質エネルギーは約220kcalとなる計算です。

エネルギー計算などが身近でない患者さんにとって、
糖類摂取のコントロールってなかなか出来ないですよね。

虫歯の話とからめて、
こんな話をしてもらえると
患者さんにもすんなり理解しやすく
なるのではないでしょうか。

その他、口腔粘膜疾患やエナメル質の形成不全、
口腔がんや酸蝕症と栄養のつながりについても
報告されています。

これらの情報について、
先生はもちろんご存知だと思います。
しかし、私の通っている歯科医院でも
こうした栄養の話は聞いたことはありませんし、
私の周囲でも説明を受けたという人が
ほとんどいませんでした。

栄養学は口腔の健康のみならず、
全身の健康とも密接に関わっています。

これは予防歯科の考えに相通じるものが
あると思います。

是非、あなたの医院でも患者さんに
わかりやすく説明してみてはいかがでしょうか。

参考文献:歯を守る栄養学と全身の健康-世界保健機関(WHO)の紀要から-
花田信弘
Health Science and Health Care 13(2):82-85, 2013

関連ブログ:患者さんの食事を知る!~「食生活アンケート」4つのメリット
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