
さまざまな理由から院内で配慮を必要とする
患者さんにも安心して受診していただくためには、
設備を整えるだけでなく、
スタッフ一人ひとりが患者さんの特性に応じた
対応を理解しておくことが重要です。
今回は、日常の院内業務で
見落としやすいポイントを中心に、
すぐに取り入れたい具体的な対応について
考えていきます。
バリアフリーだけでは不十分な場合も
バリアフリーに対応した歯科医院であっても、
実際に患者さんが院内を移動するときに
十分な安全が確保されているとは限りません。
車いす対応をうたっているものの、
棚や観葉植物・備品によって
ユニットまでの動線が狭くなっている
ケースがあります。
また、車いすから診療用チェアへ
移乗する場合には、
車いすを横付けできるスペースや、
スタッフが介助しやすい空間作りが必要です。
院内の設備を確認するときは、
「車いすが入れるか」だけではなく、
「実際に患者さんがどこを通り・
どこで方向転換し・どこで立ち上がるのか」
という視点で見直すとよいでしょう。
また、確認したいのは
車いすの患者さんだけではありません。
杖を使用する方、
視覚障害のある方、
聴覚障害のある方など、
それぞれに異なる困りごとがあります。
「段差がないから大丈夫」ではなく、
実際の患者さんの動きを想定して
院内を歩いてみることが、
安全対策の第一歩になります。
具体的な配慮を考える
配慮を必要とする患者さんへの対応は
「特別扱いをする」のではなく、
本人が必要としている方法で
情報を受け取ったり、
移動したりできるように
配慮することが基本です。
厚生労働省のガイドラインでも、
特性に応じて、筆談や図解、読み上げなど
さまざまなコミュニケーション方法を
用いることが示されています。
具体的には、次のような点を
院内で共有しておくと対応しやすくなります。
・どのような手助けが必要か本人に確認する
・筆談用のボードやメモ・タブレットなどを準備
・患者さんの理解しやすさに配慮し、
ゆっくり分かりやすく話す
・質問するときは一度に多くを尋ねないようにする
・答えやすい聞き方を意識する
口元や表情を見てコミュニケーションを取る
患者さんもいるため、
感染対策などを踏まえつつ可能な場面では、
患者さんと顔を合わせて話すことを
意識するとよいでしょう。
院内の安全対策としては、
雨天時の床面にも注意が必要です。
特に入口付近は、
雨水で床が濡れると滑りやすくなるため、
吸水性のあるマットを設置し、
濡れた状態が続かないよう
こまめに確認しましょう。
マットそのものがめくれたりずれていると
転倒の原因となるため、
固定状態まで確認しておくことが大切です。
歯科医師に向けた研修の受講も検討しよう
配慮を必要とする患者さんへの対応を
院内で充実させるには、
設備や接遇の見直しだけでなく、
歯科医師自身が障害者歯科について
学ぶことも重要です。
日本障害者歯科学会では、
障害者への歯科医療に必要な
臨床経験・知識・技術・障害への理解などを
備えた歯科医師を認定する制度を設けています。
また、障害者歯科に関する研修会も
開催されています。
障害特性や患者さんの状態などに応じ、
院内でどのような配慮が必要なのかを学ぶことは
日常診療の安全性を高めるうえでも
役立つでしょう。
研修で得た知識は、
受講した歯科医師だけで終わらせず、
スタッフミーティングなどを活用して
院内で共有することが大切です。
「車いすの患者さんが来院したらどうするか」
「聴覚障害のある患者さんには
どの方法で説明するか」など、
具体的な場面を想定して対応を決めておくと、
実際の来院時にも慌てにくくなります。
まとめ
配慮を必要とする患者さんを
安全に案内するためには、
バリアフリー設備だけでなく、
実際の動線やコミュニケーション方法まで含めて
院内環境を見直すことが重要です。
スタッフと一緒に院内を歩き、
危険や不便がないかを確認してみましょう。
また、必要に応じて研修やセミナーを受講し、
得た知識を院内全体で共有することも
検討してみてください。


















